高齢者虐待防止法をわかりやすく|5つの虐待・身体拘束の3要件・通報義務
福祉サービス分野/第80講の解説記事 | 更新:2026年
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高齢者虐待防止法(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)は、高齢者(65歳以上の者)への虐待の防止とあわせて、養護者支援を目的とする法律です。責任主体を市町村と位置づけ、地域包括支援センターを高齢者虐待防止の中核機関としています。試験では重要度Aの頻出単元で、「暴言はどの虐待か」「身体拘束の3要件」「家庭と施設の通報義務の違い」が繰り返し問われています。
ここだけ覚える
- 高齢者=65歳以上。責任主体=市町村・中核機関=地域包括支援センター。虐待は養護者によるものと養介護施設従事者等によるものの2つ。
- 虐待は5類型:身体的(暴行)・介護等放棄(減食・放置)・心理的(著しい暴言・拒絶)・性的・経済的(親族も主体・金銭を渡さない/使わせない)。暴言=心理的虐待(第28回-問60)。
- 身体拘束は原則禁止(「身体拘束ゼロへの手引き」2001年・11行為)。例外は切迫性・非代替性・一時性のすべてを満たす場合(第20回-問60)+態様・時間・心身の状況・理由の記録。委員会3月に1回以上・指針・研修(2018年度改定)。
- 家庭の虐待:生命・身体に重大な危険→通報義務。市町村長は立入調査ができ、所轄の警察署長に援助を求められる。保護は老人福祉法の措置(一時保護など)。
- 施設の虐待:職員の通報義務は重大な危険に限らない→市町村は都道府県に報告→市町村長・知事が監督権限を行使。都道府県知事が毎年度公表。
高齢者虐待防止法の概要|市町村が責任主体・地域包括が中核
高齢者虐待防止法は、高齢者(65歳以上の者)への虐待の防止とあわせて、養護者支援を目的とします。おもな内容は次のとおりです。
- 虐待の定義と虐待発見時の対応。
- 市町村による養護者支援施策(負担軽減のため、養護者の相談、指導および助言その他の必要な措置)。
- 施設の虐待状況の都道府県知事による公表。
- 高齢者の福祉に関係する者に、虐待を発見しやすい立場を自覚して早期発見に努めることを求める(介護支援専門員にもその役割が期待されている)。
定義の整理:高齢者虐待=「養護者による高齢者虐待及び養介護施設従事者等による高齢者虐待」。養護者=高齢者を現に養護する者で従事者等以外のもの。養介護施設には老人福祉施設・有料老人ホーム・介護保険施設・地域密着型介護老人福祉施設・地域包括支援センターが、養介護事業には居宅サービス事業・居宅介護支援事業などが含まれます。
虐待の5類型|「著しい暴言」は心理的虐待
- 身体的虐待:高齢者の身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を加えること。
- 介護等放棄(ネグレクト):高齢者を衰弱させるような著しい減食または長時間の放置、養護者以外の同居人による虐待の放置等、養護を著しく怠ること。
- 心理的虐待:高齢者に対する著しい暴言または著しく拒絶的な対応その他、著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
- 性的虐待:わいせつな行為をすることまたはさせること。
- 経済的虐待:養護者または高齢者の親族が財産を不当に処分すること、不当に財産上の利益を得ること、日常生活に必要な金銭を渡さない・使わせないこと。
過去問(第28回-問60):「養護者の高齢者に対する著しい暴言は、身体的虐待に該当する」=×。著しい暴言は心理的虐待に該当します。経済的虐待の主体に親族が含まれる点もセットで。
身体拘束の禁止と例外の3要件|「すべて」を満たす
高齢者虐待防止法の定義とは別に虐待に含まれるものに、身体拘束があります。介護保険制度において身体拘束は原則として禁止され、厚生労働省「身体拘束ゼロへの手引き」(2001〈平成13〉年)に、ひもなどで縛る・ベッドを柵(サイドレール)で囲む・ミトン型の手袋・Y字型抑制帯や車いすテーブル・立ち上がりを妨げるいす・介護衣(つなぎ服)・向精神薬の過剰服用・開けられない居室への隔離など11の行為が示されています。
- 例外は、生命または身体を保護するため「緊急やむを得ない場合」に、切迫性(生命・身体が危険にさらされる可能性が著しく高い)・非代替性(代替する介護方法がない)・一時性(行動制限が一時的)の3要件をすべて満たす場合。
- 身体拘束を行う場合、その態様および時間、入所者の心身の状況、緊急やむを得ない理由の記録がなければ身体拘束廃止未実施減算が算定される。
- 2018(平成30)年度介護報酬改定で追加:適正化の対策を検討する委員会を3月に1回以上開催し結果を従業者に周知徹底/適正化のための指針を整備/従業者への研修を定期的に実施。
過去問(第20回-問60):「身体拘束が認められるのは、切迫性・非代替性・一時性のいずれかを満たす場合である」=×。すべてを満たす場合です。
虐待発見時の対応|家庭と施設で通報義務が違う
家庭における虐待への対応の流れは、通報→市町村→立入調査→老人福祉法による保護のための措置(一時保護など)です。通報に代えて本人が市町村へ届け出ることも可能です。
- 通報義務:高齢者の生命または身体に重大な危険が生じている場合。
- 市町村長は、重大な危険が生じている場合は立入調査ができ、立入調査にあたって所轄の警察署長に援助を求めることができる。居室を確保するための必要な措置をとる。
施設などでの虐待への対応は、次の3ステップです。
- ❶施設内で虐待を受けた高齢者を発見した施設等職員の通報義務(生命・身体に重大な危険が生じている場合に限らない)。
- ❷通報を受けた市町村は都道府県に報告。
- ❸通報・報告を受けた市町村長または都道府県知事は、老人福祉法または介護保険法による監督権限を行使する。都道府県知事は毎年度、養介護施設従事者等による虐待の状況等を公表。
ひっかけ注意:家庭=重大な危険が生じている場合に通報義務/施設=職員の通報義務は重大な危険に限らない。この違いが最大の出題ポイントです。
高齢者虐待の現状|いずれも増加・1位は身体的虐待
- 厚生労働省の令和5年度調査によると、2023(令和5)年度の「相談・通報件数」「虐待判断件数」は、養護者によるもの・養介護施設従事者等によるものいずれも前年度より増加。
- 養護者による虐待:相談・通報4万386件・虐待判断1万7100件。施設従事者等:相談・通報3441件・虐待判断1123件。
- 種別(養護者):❶身体的65.1% ❷心理的38.3% ❸介護等放棄19.4% ❹経済的15.9% ❺性的0.4%。種別(施設従事者等):❶身体的51.3% ❷心理的24.3% ❸介護等放棄22.3% ❹経済的18.2% ❺性的2.7%。
よくある質問(FAQ)
高齢者虐待防止法の責任主体と中核機関はどこですか?
責任主体は市町村です。また、地域包括支援センターが高齢者虐待防止の中核機関として位置づけられ、相談支援、権利擁護などを業務の範囲としています。法は高齢者(65歳以上の者)への虐待の防止とあわせて、養護者支援(負担軽減のための相談、指導および助言その他の必要な措置)を目的としています。
高齢者に対する著しい暴言はどの虐待にあたりますか?
心理的虐待にあたります(第28回-問60で「身体的虐待に該当する」=×として出題)。心理的虐待は、著しい暴言または著しく拒絶的な対応その他、高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うことです。身体的虐待は、身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を加えることをいいます。
身体拘束が例外的に認められる3要件とは何ですか?
切迫性(生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと)、非代替性(身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと)、一時性(行動制限が一時的なものであること)の3つで、「緊急やむを得ない場合」としてこのすべてを満たす必要があります(第20回-問60で「いずれか」=×として出題)。あわせて、態様および時間、心身の状況、緊急やむを得ない理由の記録が必要で、記録がなければ身体拘束廃止未実施減算が算定されます。
家庭と施設で虐待の通報義務はどう違いますか?
家庭における虐待では、高齢者の生命または身体に重大な危険が生じている場合に通報義務があります(通報に代えて本人が市町村へ届け出ることも可能)。一方、施設内で虐待を受けた高齢者を発見した施設等職員の通報義務は、重大な危険が生じている場合に限りません。通報を受けた市町村は都道府県に報告し、市町村長または都道府県知事が老人福祉法または介護保険法による監督権限を行使します。
高齢者虐待の件数や種別はどうなっていますか?
令和5年度調査(厚生労働省)によると、2023年度の相談・通報件数と虐待判断件数は、養護者によるもの・養介護施設従事者等によるものいずれも前年度より増加しています。養護者による虐待は相談・通報4万386件・虐待判断1万7100件、施設従事者等は相談・通報3441件・虐待判断1123件です。種別はどちらも身体的虐待が最多(養護者65.1%・施設従事者等51.3%)で、次いで心理的虐待となっています。
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