保健医療サービス分野 > 第29講 バイタルサインと検査|体温・脈拍・血圧・呼吸・意識・検査値/全文
この講で先生が話す内容を、そのまま文章にしたものです。音声を聞けないときや、あとから読み返したいときにどうぞ。上のスライドと同じ内容です。
第2章 保健医療サービス分野 / SEC4
バイタルサインと検査
この講では「バイタルサイン」と「検査」を学びます。
- バイタルサイン5つの基準値と異常のサイン
- 血圧の最新の目標値(2025年改定)
- 特徴的な呼吸と意識レベル(JCS)
- 検査の種類と検査値の見方
第29講、バイタルサインと検査を始めましょう。
この講では、バイタルサインと検査を学びます。
今日のゴールは4つです。
1つ目、バイタルサイン5つの基準値と、異常のサインです。
2つ目、血圧の最新の目標値です。2025年に新しくなりました。
3つ目、特徴的な呼吸と、意識レベルのジェイシーエスです。
4つ目、検査の種類と、検査値の見方です。
命を映す5つの指標
バイタルサインとは
バイタルサインは、生命の維持にかかわる5つの身体情報です。
- 体温:36.5±0.5℃(37℃以上で高体温/34℃以下で低体温)
- 脈拍:60〜85回/分(100以上で頻脈/50未満で徐脈)
- 血圧:正常は120/80mmHg未満(140/90以上で高血圧)
- 呼吸:成人12〜18回/分(高齢者15〜20回/分)
- 意識レベル:清明であること
バイタルサインとは、生命の維持にかかわる5つの身体情報です。
1つ目、体温。基準は36.5度プラスマイナス0.5度。37度以上で高体温、34度以下で低体温です。
2つ目、脈拍。1分間に60から85回。100以上で頻脈、50未満で徐脈です。
3つ目、血圧。正常は120、80未満。140、90以上で高血圧です。
4つ目、呼吸。成人は1分間に12から18回、高齢者は15から20回です。
5つ目、意識レベル。清明、つまりはっきり目覚めていることが正常です。
高齢者は低め・発熱の読み方
体温
高齢者は基礎代謝が下がるため、平熱が低めの人が多くいます。
- 稽留熱=下がらず続く熱/間欠熱=急な発熱と解熱を繰り返す
体温です。高齢者は基礎代謝が下がるため、平熱が低めの人が多くいます。最近は平熱が35度台という人も増えています。
低体温の原因は、環境、低栄養、甲状腺機能低下症、薬剤などです。低体温では、速やかな救命の対応が必要です。
発熱の原因は、感染のほか、悪性腫瘍、膠原病、甲状腺機能亢進症、熱中症、脱水などでも起こります。
ここが大事です。高齢者は、感染症でも発熱しないことがあり、発熱の高さと病気の重さが一致しないことがあります。原因がはっきりしない不明熱も多いのが特徴です。
用語を2つ。下がらずに続く熱を稽留熱、急な発熱と解熱を繰り返すのを間欠熱といいます。
測る場所・頻脈と徐脈
脈拍
脈拍は、ふつう手首の橈骨動脈で、1分間に何回打つかを測ります。
脈拍です。ふつうは手首の橈骨動脈で、1分間に何回打つかを測ります。
脈が触れないときは、首の頸動脈や、足の付け根の股動脈で測ります。
頻脈、つまり脈が速くなるのは、感染症、心不全、甲状腺機能亢進症、脱水などのときです。
徐脈、つまり脈が遅くなるのは、脳圧の高まり、薬剤の副作用、甲状腺機能低下症などのときです。
注意点です。重い徐脈は、意識障害や失神を伴うことがあり、治療の対象になります。
2025年の最新ルール
血圧① 基準値と目標
血圧は、動脈の壁にかかる圧力。上が収縮期、下が拡張期です。
血圧です。血圧とは、動脈の壁にかかる圧力のこと。心臓が縮むときが上の収縮期血圧、ゆるむときが下の拡張期血圧です。
正常血圧は、120、80未満です。
診察室で測って140、90以上だと、高血圧と診断されます。これが診断の基準です。
血圧を下げる目標は、診察室で130、80未満。家庭で測るときは125、75未満です。
ここが2025年の改定でいちばん大事なところです。高血圧と診断する140、90という基準は変わっていません。変わったのは、下げる目標のほう。年齢や持病に関係なく、全員130、80未満に統一されました。
左右差・起立性低血圧
血圧② 高齢者の注意点
加齢で動脈硬化が進むと、上(収縮期)は高く、下(拡張期)は低くなりがち。
血圧の続きです。加齢で動脈硬化が進むと、上の血圧は高く、下の血圧は低くなる傾向があります。
大動脈の病気や、進んだ動脈硬化では、左右の腕で血圧に差が出ることがあります。だから左右の両方で測ります。これはよく問われます。
高齢者で注意したいのが起立性低血圧です。寝ていたり座っていた姿勢から急に立つと、ふらつき、めまい、失神などが起こります。
目安は、立ち上がってから3分以内に、上の血圧が20、下の血圧が10ミリ以上下がること。お酒や降圧薬、利尿薬も原因になります。
回数・高齢者の肺・酸素不足
呼吸① 基準とチアノーゼ
呼吸の基準は、成人で1分12〜18回、高齢者で15〜20回。
呼吸です。基準は、成人で1分間に12から18回、高齢者で15から20回です。
25回以上だと頻呼吸。発熱、心不全、呼吸器の病気、興奮したときなどにみられます。
9回以下だと徐呼吸。昏睡や、睡眠薬の飲みすぎなどで現れます。
高齢者の肺の特徴です。出入りする空気の量、換気量は変わりませんが、吐ききっても肺に残る残気量が増え、肺活量が下がります。
酸素が足りなくなると、皮膚や粘膜、とくに爪や唇のまわりが紫色になります。これをチアノーゼといいます。
6つの呼吸と原因疾患
呼吸② 特徴的な呼吸
- 起座呼吸:横になると苦しく座ると楽=左心不全の徴候(喘息・肺炎でも)
- 口すぼめ呼吸:口をすぼめて吐く=COPD(慢性閉塞性肺疾患)
- 下顎呼吸:顎であえぐ=臨死期(始まると1〜2時間で死亡が多い)
- チェーンストークス呼吸:頻→徐→無呼吸の周期=脳血管障害・心不全の重症時
- クスマウル呼吸:異常に深い規則的な呼吸=糖尿病性ケトアシドーシス・尿毒症
- ビオー呼吸:不規則に呼吸と無呼吸=髄膜炎・脳腫瘍
特徴的な呼吸を6つ覚えます。疾患とセットで出ます。
起座呼吸。横になると苦しく、座って頭を高くすると楽になる呼吸。左心不全の徴候です。喘息や肺炎でもみられます。
口すぼめ呼吸。口をすぼめてゆっくり吐く呼吸で、シーオーピーディー、慢性閉塞性肺疾患でよくみられます。
下顎呼吸。顎であえぐような呼吸で、臨死期にみられます。始まると1から2時間後に亡くなることが多いです。
チェーンストークス呼吸。頻呼吸、徐呼吸、無呼吸が周期的に繰り返す呼吸で、脳血管障害や心不全の重症時にみられます。
クスマウル呼吸。異常に深く規則正しい呼吸で、糖尿病性ケトアシドーシスや尿毒症でみられます。
ビオー呼吸。不規則な周期で呼吸と無呼吸が交互に現れる呼吸で、髄膜炎や脳腫瘍でみられます。
清明〜昏睡・3-3-9度方式
意識レベル① 段階とJCS
意識レベルは、清明から昏睡へと、順に悪くなります。
- 清明:正常にはっきり目覚めている
- 傾眠:刺激がないと眠ってしまう
- 昏迷:強い刺激でようやく目を開ける
- 昏睡:自発運動がなく痛みにも反応しない(最重度)
意識レベルです。意識は、清明から昏睡へと、だんだん悪くなります。
清明は、正常にはっきり目覚めている状態です。
傾眠は、刺激がないと眠ってしまう状態です。
昏迷は、強い刺激でようやく目を開ける状態です。
昏睡は、自発的な動きがなく、痛み刺激にも反応しない、いちばん重い状態です。
この意識レベルを詳しく評価するのが、ジャパン・コーマ・スケール、ジェイシーエスです。3、3、9度方式ともよばれます。
桁の意味・大きいほど重い
意識レベル② JCSの読み方
JCSは覚醒度を3段階に分け、各3段階の合計9段階で表します。
ジェイシーエスの読み方です。覚醒度を3つの段階に分け、それぞれをさらに3つに分けて、数字で表します。
1桁、1から3は、刺激しなくても覚醒している、いちばん軽い段階です。
2桁、10から30は、刺激すると覚醒するけれど、刺激をやめると眠り込む段階です。
3桁、100から300は、刺激しても覚醒しない、重い段階です。
ここが引っかけです。数字が大きいほど意識障害は重くなります。小さいほど重い、というのは誤りです。ほかに、言語、開眼、運動で評価するジーシーエス、グラスゴー・コーマ・スケールもあります。
臨床検査の4分類・心電図
検査の種類/生理機能検査
医療機関で行う検査を、まとめて臨床検査といいます。
- 検体検査:血液・尿などを調べる
- 生理機能検査:心電図・血圧など体の働きを測る
- 画像検査:X線・CT・MRI
- 体格測定検査:身長・体重・腹囲など
ここから検査です。医療機関で行う検査を、まとめて臨床検査といいます。大きく4つに分かれます。
1つ目、検体検査。血液や尿などを調べます。
2つ目、生理機能検査。心電図や血圧など、体の働きを測ります。
3つ目、画像検査。エックス線、シーティー、エムアールアイです。
4つ目、体格測定検査。身長、体重、腹囲などを測ります。
生理機能検査の代表が心電図で、循環器の病気に欠かせません。狭心症や不整脈では、小型の機械をつけて24時間測るホルター心電図を使います。これは日常生活の中で測る検査なので、横になって寝ている必要はありません。ここはよく問われます。
X線・CT・MRIの使い分け
画像検査
画像検査は、X線・CT・MRIが代表です。
画像検査です。代表は、エックス線、シーティー、エムアールアイです。
胸部エックス線は、シーオーピーディーや肺がんのほか、心臓の拡大や胸の水、胸水もわかり、心臓の病気にも役立ちます。
腹部エックス線は、腸閉塞、消化管に穴があく穿孔、結石などが疑われるときに使います。
シーティーやエムアールアイは、脳血管障害、頭部外傷、認知症などの診断に使われます。
ひとつ補足です。狭心症は、症状が出ていないと心電図で異常が出ないことが多いため、確定診断には冠動脈造影やシーティー、エムアールアイが必要になります。
BMI・腹囲・上腕周囲長
体格測定検査
身長・体重・腹囲・上腕周囲長などを測ります。
体格測定検査です。身長、体重、腹囲、上腕の周囲などを測ります。
ビーエムアイは、体重を身長の2乗で割った値。基準は18.5から24.9です。高齢者は背骨の変形などで身長が低く測られ、ビーエムアイが本来より大きく出ることがあります。
腹囲は、男性85センチ、女性90センチ以上で、おなか型の肥満とされ、メタボリックシンドロームの診断に使います。
上腕の周囲は、男性20センチ、女性19センチを下回ると、低栄養の可能性があります。
覚えておきたい点です。身長が縮むのは骨粗鬆症が多く、体重が急に減るのは、がんや糖尿病の悪化、脱水を疑います。
白血球・赤血球・血小板・CRP
検査値① 血液の検査
- 白血球:細菌感染で増加・ウイルス感染で減少
- 赤血球・血色素(Hb):低いと貧血。胃・十二指腸潰瘍でも減少
- 血小板:高いと血栓・低いと再生不良性貧血や白血病・肝硬変
- CRP:炎症や組織破壊で増加(感染・梗塞・悪性腫瘍・膠原病)
検査値の見方に入ります。まず血液の検査です。
白血球は、細菌に感染すると増え、ウイルスに感染すると減ります。
赤血球や、血色素のヘモグロビンは、低いと貧血の可能性です。胃や十二指腸の潰瘍でも減ります。
血小板は、高いと血栓ができやすく、低いと再生不良性貧血や急性白血病、肝硬変の可能性があります。
シーアールピーは、体の中で炎症や組織の破壊が起きると増えます。感染、梗塞、悪性腫瘍、膠原病などです。
AST/ALT・Cr・LDL・HbA1c
検査値② 肝・腎・脂質・血糖
- 肝臓:AST・ALT・γ-GTPが増加(肝炎・脂肪肝・アルコール)
- 腎臓:クレアチニン(Cr)が腎機能悪化で増加・筋肉量低下で減少
- 脂質:LDL(悪玉)が高い・HDL(善玉)が低いと動脈硬化
- 血糖:HbA1cは過去1〜2か月の平均血糖を反映
続いて、生化学の検査です。臓器ごとに整理します。
肝臓では、エーエスティー、エーエルティー、ガンマジーティーピーが増えます。肝炎、脂肪肝、お酒の飲みすぎなどです。
腎臓では、クレアチニンが、腎機能が悪くなると増えます。逆に、寝たきりや筋肉量の低下では減ります。
脂質では、悪玉のエルディーエルが高い、または善玉のエイチディーエルが低いと、動脈硬化につながります。
血糖は、空腹時血糖とヘモグロビンエーワンシーで調べます。ヘモグロビンエーワンシーは、採血したときの血糖ではなく、過去1から2か月の平均の血糖を映します。ここはよく問われます。
最後にコツです。細かい数値を丸暗記するより、どんな病気や状態で高くなるか、低くなるかを押さえると、得点しやすいです。
今日のポイントと次の一歩
まとめ
- バイタル5つ=体温・脈拍・血圧・呼吸・意識
- 血圧は診断140/90据え置き・目標130/80に統一(2025)
- 呼吸の型と意識JCS(数字が大きいほど重度)
- 検査値は「どの疾患で異常か」で押さえる
まとめです。今日のポイントを4つ振り返ります。
1つ目、バイタルサインは、体温、脈拍、血圧、呼吸、意識レベルの5つ。
2つ目、血圧は、診断の140、90は据え置き、下げる目標が130、80に統一されました。
3つ目、特徴的な呼吸の型と、意識レベルのジェイシーエス。数字が大きいほど重いです。
4つ目、検査値は、どの病気で高く、低くなるかで押さえる。
おつかれさまでした。続けて一問一答で確認し、解説記事でも復習しましょう。
この講の一問一答(◯×11問・五肢複択2問)
すべてオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。答えは「答えと解説」を開くと出ます。全82講ぶんをまとめて解く →
バイタルサインには、体温・脈拍・血圧・呼吸・意識レベルが含まれる。
答えと解説
◯ ○。この5つが生命の維持にかかわる基本指標。
高齢者は、感染症にかかっても発熱がみられないことがある。
答えと解説
◯ ○。発熱の高さと重症度が一致しないことも多く、不明熱も少なくない。
脈拍は、ふつう足の付け根の股動脈で測定する。
答えと解説
✕ ×。ふつうは手首の橈骨動脈で測る。触れないときに頸動脈や股動脈を用いる。
高血圧の診断基準は、2025年のガイドライン改定で130/80mmHg以上に引き下げられた。
答えと解説
✕ ×。診断基準は140/90mmHg以上のまま据え置き。改定で変わったのは降圧目標のほう。
2025年のガイドラインでは、降圧目標が全年齢で診察室130/80mmHg未満に統一された。
答えと解説
◯ ○。家庭血圧は125/75mmHg未満。診断基準(140/90)は据え置きで、目標が引き下げ・統一された。
大動脈疾患が疑われる場合、血圧は左右両方の腕で測定する。
答えと解説
◯ ○。大動脈疾患や進んだ動脈硬化では左右差が出ることがある。
起立性低血圧は、起立後3分以内に収縮期20mmHg以上、または拡張期10mmHg以上の低下がみられる状態をいう。
答えと解説
◯ ○。飲酒・降圧薬・利尿薬も原因になる。
心不全による呼吸困難は、横になると軽くなり、起き上がると強くなる。
答えと解説
✕ ×。逆。横になると苦しく、起き上がると楽になる起座呼吸が左心不全の徴候。
ジャパン・コーマ・スケール(JCS)では、数字が小さいほど意識障害が重い。
答えと解説
✕ ×。数字が大きいほど重い。1桁→2桁→3桁の順に重度。
ホルター心電図の検査中は、横になって安静を保つ必要がある。
答えと解説
✕ ×。24時間にわたり日常生活の中で記録する検査なので、臥床安静は不要。
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、採血したときの血糖値を直接反映する。
答えと解説
✕ ×(第26回)。過去1〜2か月の平均的な血糖の状態を反映する。
五肢複択
バイタルサインの基準について、正しいものを2つ選べ。
- 成人の呼吸数の基準は、1分間に12〜18回である。
- 脈拍が1分間に100回以上を徐脈という。
- 高血圧の診断基準は、診察室血圧140/90mmHg以上である。
- 体温が34℃以下の状態を高体温という。
- 意識レベルは、清明であることが異常な状態である。
答えと解説
正解:1・3
1 正しい。高齢者は15〜20回。
2 誤り。100回以上は頻脈、50回未満が徐脈。
3 正しい。2025年改定でも据え置き。
4 誤り。34℃以下は低体温、37℃以上が高体温。
5 誤り。清明(はっきり目覚めている)が正常。
特徴的な呼吸とその原因について、正しいものを2つ選べ。
- 起座呼吸は、左心不全のときにみられる。
- 口すぼめ呼吸は、糖尿病性ケトアシドーシスのときにみられる。
- クスマウル呼吸は、糖尿病性ケトアシドーシスや尿毒症のときにみられる。
- 下顎呼吸は、回復期の徴候である。
- チェーンストークス呼吸は、健康な人の通常の睡眠時にみられる。
答えと解説
正解:1・3
1 正しい。喘息・肺炎でもみられる。
2 誤り。口すぼめ呼吸はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)。
3 正しい。異常に深く規則的な大きな呼吸。
4 誤り。下顎呼吸は臨死期の徴候(多くは1〜2時間で死亡)。
5 誤り。脳血管障害や心不全の重症時にみられる。