保健医療サービス分野 > 第31講 急変時の対応|止血・誤嚥(窒息)・心肺蘇生(CPR)・AED・体位のまとめ/全文
この講で先生が話す内容を、そのまま文章にしたものです。音声を聞けないときや、あとから読み返したいときにどうぞ。上のスライドと同じ内容です。
CH2 SEC6
第31講 急変時の対応
高齢者は、病状が急に変わったり、転倒・窒息・溺水などの事故が起こりやすい。この講では、いざというときの正しい初期対応を学びます。初期対応が、その後の経過(予後)を左右します。
- 高齢者の急変の特徴:症状が非定型・自覚症状や訴えが少ない→気づかぬうちに重症化
- 大きく2本立て:事故への対応(転倒・誤嚥・誤薬・やけど・溺水・心停止)
- 身体変化への対応(意識・腹痛嘔吐・吐血下血喀血・呼吸)
- 合言葉は「医療と介護の連携」。受診先・連絡方法をあらかじめ決めておく
第31講を始めましょう。テーマは、急変時の対応です。
高齢者は、病状が急に変わったり、転倒、窒息、溺水などの事故が起こりやすい。この講では、いざというときの正しい初期対応を学びます。大事なのは、この初期対応が、その後の経過、予後を左右する、ということです。
前提として、高齢者の急変には特徴があります。症状が典型的でなく、自覚症状や訴えも少ない。だから、気づかないうちに重症化しやすいのです。
内容は大きく2本立て。1つめが、事故への対応。転倒、誤嚥、誤薬、やけど、溺水、そして心停止です。
2つめが、身体変化への対応。意識、腹痛や嘔吐、吐血・下血・喀血、そして呼吸の変化です。
そして、全体を貫く合言葉が、医療と介護の連携。あらかじめ、予想される急変への対応方法、受診先、連絡方法を決めておくこと。これが、いざというときの初期対応を支えます。それでは始めましょう。
事故への対応
転倒(発見したときの対応)
高齢者は、運動器の衰え・平衡機能や視力の低下・認知機能の低下で転倒しやすい。さらに骨密度の低下で骨折もしやすい。発見時の流れを押さえます。
- なぜ転びやすい?…運動器が不安定+平衡機能・視力・認知機能の低下が重なるから
- 発見したら、まず転倒の状況・意識の有無・身体状況を把握する
- 各病態に対応しつつ、いずれの場合も速やかに医療機関へ連絡
- 次から、転倒に伴う「打撲・出血」「骨折」への対応を具体的に
まず、事故への対応から。最初は転倒です。
高齢者は、なぜ転びやすいのか。運動器官が不安定になることに加え、平衡機能や視力の衰え、認知機能の低下が重なるからです。そして、骨密度の低下で、転ぶと骨折もしやすい。
転倒を発見したら、まず何をするか。転倒の状況、意識の有無、そして身体の状況を、把握することから始めます。
そのうえで、それぞれの病態に対応しますが、どの場合も共通して、速やかに医療機関に連絡します。これが大原則です。
次のスライドから、転倒に伴う、打撲・出血への対応と、骨折への対応を、具体的に見ていきます。
転倒対応のゴールは、悪化させずに、医療につなぐこと。むやみに動かさず、状態を把握して連絡する。この基本姿勢を覚えておきましょう。
事故への対応
打撲・出血(止血と危険サイン)
出血を止めるには「押さえる場所」と「高さ」がポイント。さらに、頭や腹を打ったときの危険なサインを見逃さないことが大切です。
- 傷からの出血=清潔なガーゼ・タオルで圧迫して止血
- 激しい出血や清潔な布がないとき=出血部位より「心臓に近い側」を圧迫し、出血部位を心臓より高く上げる
- 頭部打撲で記憶障害・頭痛・嘔吐→頭蓋内出血の疑い/両手足の脱力・しびれ→頸椎損傷の疑い(動かさない)
- 腹部打撲で下腹部が膨らむ→肝臓・脾臓からの出血の疑い
転倒に伴う、打撲と出血への対応です。
まず、傷からの出血。清潔なガーゼやタオルで、傷口を圧迫して止血します。
ここが頻出。激しく出血している、あるいは清潔な布がないときは、出血部位よりも、心臓に近い側を圧迫します。そして、出血部位を心臓より高く上げます。遠い側ではありません。
次に、危険なサイン。頭を打って、記憶障害、頭痛、嘔吐がみられたら、頭蓋内の出血が疑われ、検査が必要です。両手足の脱力やしびれがあれば、頸椎損傷の疑い。動かすと悪化するので、極力動かしません。
おなかを打って、下腹部がふくらんでくる場合は、肝臓や脾臓からの出血が疑われます。
なぜ心臓に近い側なのか。血液は、心臓から手足の先へ流れます。だから、出血点より心臓側、つまり流れの上流で押さえれば、出血を止められる。高く上げるのは、重力で血流を弱めるためです。理由で覚えましょう。
事故への対応
骨折(好発部位と固定)
高齢者の転倒では骨折がつきもの。折れやすい場所と、動かさず固定するという対応を押さえます。
- 転倒で折れやすい部位=大腿骨頸部・手首(橈骨遠位端)・上腕骨頸部
- 骨折が疑われたら、動かないように固定する(むやみに動かさない)
- 骨が皮膚から出ている開放骨折は、感染のおそれがあるので触れない
- とくに大腿骨頸部骨折は寝たきりに直結(第30講で学習)。早期の手術・離床が鍵
続いて、骨折への対応です。
高齢者が転倒で折れやすい部位は、太ももの付け根の大腿骨頸部、手首の橈骨遠位端、そして肩に近い上腕骨頸部です。この3つを覚えましょう。
骨折が疑われたら、動かないように固定します。むやみに動かさないことが大切です。
とくに注意。骨が皮膚から飛び出している開放骨折は、感染のおそれがあるので、触れないようにします。
なかでも大腿骨頸部骨折は、第30講でも学んだとおり、寝たきりに直結します。早期の手術と離床が鍵になります。
考え方は、第30講の骨折と同じ。ゴールは、廃用、つまり寝たきりを防ぐこと。だから現場では、悪化させずに固定して、医療につなぐのです。
事故への対応
誤嚥・窒息①(特徴とサイン)
高齢者は嚥下機能の低下で、食べ物や唾液が気道に入る誤嚥・窒息が起こりやすい。まず気づくことが命を分けます。
- のどに詰まると、のどをつかむしぐさ=チョークサインが出る
- ただし高齢者は、窒息しても苦しがらず、じっとしていることがある→だから注意
- まずはせきを出させると、異物が出ることもある
- 奥に行かせないよう側臥位にし、口の中の異物を確認してかき出す→取れなければ次の手技へ
次は、誤嚥と窒息です。2枚に分けます。まずは、特徴とサインから。
高齢者は、飲み込む力、嚥下機能の低下で、食べ物や唾液が気道に入る誤嚥や窒息が起こりやすくなります。まず気づくことが、命を分けます。
のどに詰まると、苦しくて、のどを手でつかむしぐさが出ます。これをチョークサインといいます。
ただし、ここが落とし穴。高齢者は、窒息していても、苦しがらずに、じっとしていることがあるのです。だから、注意深く見ることが必要です。
対応です。まずは、せきを出させてみる。これで、異物が出てくることもあります。
出ないときは、詰まった異物が奥に行かないよう、横向きの側臥位にして、口の中の異物を確認し、指でかき出します。それでも取れない場合は、次のスライドの手技に移ります。
事故への対応
誤嚥・窒息②(異物除去の手技)
口からかき出せないときの2つの手技。背部叩打法と腹部突き上げ法(ハイムリック法)。同時に医療機関へ連絡します。
- 背部叩打法=背中(肩甲骨の間)を強くたたいて、異物を出す
- 腹部突き上げ法(ハイムリック法)=後ろから手を回し、みぞおちを突き上げる
- 腹部突き上げ法は臓器を傷つけることがある→行ったら、その旨を必ず医療機関に伝える
- 手技と同時に、医療機関・救急へ連絡する
誤嚥・窒息の2枚目。口からかき出せないときの手技です。
2つあります。1つめが、背部叩打法。背中の、肩甲骨の間あたりを強くたたいて、異物を出す方法です。
2つめが、腹部突き上げ法。別名、ハイムリック法。後ろから両手を回して、みぞおちを、ぐっと突き上げます。
ここが大事な注意点。腹部突き上げ法は、内臓を傷つけることがあります。だから、行った場合は、その旨を必ず医療機関に伝えます。
そして、これらの手技と同時に、医療機関や救急に連絡することを忘れないでください。
過去問です。食物で窒息したとき、腹部突き上げ法を行うこともある、は正しい。ただし、臓器損傷の可能性があるので、実施したことを医療機関に伝える、までセットで覚えましょう。
事故への対応
誤薬(飲み間違いへの対応)
誤薬とは、誤った種類・量・時間・方法で薬を飲んでしまうこと。種類や量によっては生命に関わるため、落ち着いて対応します。
- 薬の種類・量によっては危険→気づいたら胃の内容物を吐かせる
- 血糖降下剤の多用やインスリンの打ちすぎ→低血糖の危険→ブドウ糖・砂糖・ジュースを飲ませる
- 気づいたとき意識がない場合=吐かせず、呼吸しやすい体位にして救急車
- 日頃の予防=薬の管理(一包化・服薬カレンダー等)で飲み間違いを防ぐ
次は、誤薬。薬の飲み間違いへの対応です。
誤薬とは、誤った種類、量、時間、または方法で、薬を飲んでしまうこと。種類や量によっては、生命に関わります。
対応です。危険な薬や量のときは、気づいたら、胃の内容物を吐かせます。
とくに注意したいのが、糖尿病の薬。血糖を下げる薬の多用や、インスリンの打ちすぎは、低血糖を起こす危険があります。このときは、ブドウ糖や砂糖、ジュースを飲ませて、血糖を上げます。
そして、気づいたときに、すでに意識がない場合。このときは、吐かせてはいけません。呼吸しやすい体位にして、救急車を呼びます。
日頃の予防も大切です。薬を一包化したり、服薬カレンダーを使ったりして、飲み間違いそのものを防ぎます。
覚え方。糖を下げる薬の入れすぎは、血糖が下がりすぎる。だから、糖を補う、ブドウ糖や砂糖で対応する。理由とセットで結びつけましょう。
事故への対応
熱傷(やけど)
やけどの基本はとにかく冷やす。ただし衣服の上からか、範囲が広いかで対応が変わります。
- 範囲が狭い=水道水などの冷水で15〜30分間、痛みがなくなるまで冷やす
- 衣服の下をやけど=衣服を脱がさず、上から冷やす(脱がすと痛みの増強・出血のおそれ)
- 範囲が広い=速やかに救急車+シャワーの水で冷やす
- 広範囲では低体温・血圧低下で意識障害を起こすこともあるので注意
次は、熱傷、やけどへの対応です。
基本は、とにかく冷やすこと。やけどの範囲が狭い場合は、水道水などの冷水で、15分から30分間、痛みがなくなるまで冷やします。
ここがポイント。衣服の下をやけどした場合は、衣服を脱がさず、衣服の上から冷やします。脱がすと、痛みが強くなったり、出血を起こしたりするからです。
やけどの面積が広範囲の場合は、速やかに救急車を要請し、シャワーの水で冷やします。
ただし、広範囲では、体が冷えすぎる低体温や、血圧の低下で、意識障害を起こすこともあるので、注意が必要です。
なぜ衣服の上からなのか。やけどで皮膚に衣服が貼りついていると、無理に脱がせば、皮膚ごとはがれて悪化します。だから、上から冷やすのが安全なのです。
事故への対応
溺水(入浴中に注意)
高齢者の溺水は、そのほとんどが入浴中に浴槽で起こります。おぼれる前に、体の中で何が起きているかを理解しましょう。
- 溺水のほとんどは入浴中・浴槽内で発生
- なぜ?…入浴で血圧変動が大きくなり、心筋梗塞や脳血管障害→意識障害→おぼれる
- 発見したらただちに浴槽から出し、心肺蘇生を行う
- 予防=脱衣所と浴室の温度差を小さく(ヒートショック対策)・長湯や高温を避ける
次は、溺水、おぼれる事故です。
高齢者の溺水は、そのほとんどが、入浴中に、浴槽の中で起こります。
なぜでしょうか。入浴では、血圧の変動が大きくなります。その結果、心筋梗塞や脳血管障害を起こして、意識障害になり、おぼれてしまうのです。だから高齢者は、とくに注意が必要です。
異常を発見したら、ただちに浴槽から出して、心肺蘇生を行います。
予防も押さえましょう。脱衣所と浴室の温度差を小さくする、長湯や高温を避ける、といった対策が有効です。
この温度差による急変を、ヒートショックといいます。寒い脱衣所と、熱い湯の温度差で、血圧が乱高下し、心臓や脳に負担がかかる。これが入浴中の急変の正体です。だから、温度差を減らすことが予防になるのです。
事故への対応
心停止・心肺蘇生①(手順)
心臓が止まったら、1秒でも早く心肺蘇生。3分以上続くと重大な脳障害が起こります。心肺蘇生は誰でも行える一次救命処置です。
- 心停止が3分以上続くと重大な脳障害→少しでも早く開始
- 心肺蘇生=胸骨圧迫(心臓マッサージ)+人工呼吸。医療職でなくても行える
- 手順:①反応の確認→②119番通報とAEDの手配→③呼吸の確認
- 正常な呼吸がなければ、仰臥位(仰向け)にして→④胸骨圧迫→⑤気道確保と人工呼吸へ
次は、心停止と、心肺蘇生です。重要なので2枚に分けます。まずは流れから。
心臓が止まったら、1秒でも早く心肺蘇生を始めます。なぜなら、心停止が3分以上続くと、重大な脳障害が生じるからです。
心肺蘇生とは、胸骨圧迫、いわゆる心臓マッサージと、人工呼吸を組み合わせた、一次救命処置です。これは、医療職でなくても、誰でも行うことができます。
手順を順に。1つめ、反応があるかの確認。2つめ、119番通報と、AEDの手配。3つめ、呼吸の確認です。
正常な呼吸がなければ、仰向けの仰臥位にして、4つめの胸骨圧迫、そして5つめの気道確保と人工呼吸へと進みます。
なぜそんなに急ぐのか。脳は、酸素が数分途切れるだけで、深刻なダメージを受けます。だから、3分が分かれ目。通報やAEDの手配は周囲の人に頼み、自分は胸骨圧迫を続けることが大切です。
事故への対応
心肺蘇生②(胸骨圧迫とAED)
胸骨圧迫は「強く・速く・絶え間なく」が合言葉。そしてAEDが来たら、音声ガイドに従います。数字が頻出です。
- 胸骨圧迫=胸骨の下半分を、両手の付け根で約5cm沈むように「強く」
- テンポは1分間に100〜120回で「速く」、絶え間なく。胸骨圧迫30回:人工呼吸2回
- 気道確保・人工呼吸は、訓練を受けていなければ行わなくてよい(胸骨圧迫を優先)
- AED(自動体外式除細動器)=電気ショックで心臓を正しいリズムに。2004年から一般の人も使用可。到着したら指示どおり実施→ただちにCPR再開
心肺蘇生の2枚目。胸骨圧迫の質と、AEDです。ここは数字が頻出します。
胸骨圧迫は、胸の真ん中、胸骨の下半分を、重ね合わせた両手の付け根で押します。深さは、胸が約5センチ沈むように、強く。
テンポは、1分間に100回から120回。速く、絶え間なく続けます。そして、胸骨圧迫30回と、人工呼吸2回を、交互に繰り返します。
なお、気道確保と人工呼吸は、訓練を受けていない場合は、行わなくてよい、とされています。まずは胸骨圧迫を優先します。
AED、自動体外式除細動器は、心臓に電気ショックを与えて、正しいリズムに戻す機器です。音声ガイドに従って操作でき、2004年から、一般の人も使用できるようになりました。到着したら、指示どおり電気ショックを行い、ただちに心肺蘇生を再開します。
過去問。胸骨圧迫は1分間に60回を目安、は誤り。正しくは、胸が約5センチ沈む強さで、1分間に100回から120回。この数字を、そのまま覚えてください。
身体変化への対応
意識レベルの低下・ADLの低下
ここからは、事故ではない身体変化への対応。まずは意識レベルの低下です。程度を把握して医療者に伝えることが、重症度の判断につながります。
- 基礎疾患以外に、脱水・熱中症・脳虚血などでも起こる(急変に伴うことも多い)
- 意識レベルの程度を把握し、医療関係者に伝える=重症度の判別に重要
- JCS(ジャパン・コーマ・スケール)がよく使われる(第29講で学習。数字が大きいほど重い)
- 在宅の利用者に意識障害があれば、救急車を要請する
ここからは、事故ではなく、体の変化、身体変化への対応です。まずは、意識レベルの低下から。
意識レベルの低下は、もとの病気だけでなく、脱水、熱中症、脳の血流不足である脳虚血などでも起こります。急変に伴うことも多いです。
大切なのは、意識レベルの程度を把握して、医療関係者に伝えること。これが、病気の重症度を判別するのに、重要になります。
意識レベルの評価には、第29講で学んだ、ジャパン・コーマ・スケール、JCSがよく使われます。数字が大きいほど重い、でしたね。
在宅の利用者さんに、意識障害がある場合は、救急車を要請します。
ここでの役割を理解しましょう。介護職は、診断はしません。けれど、どのくらいの意識レベルか、を正確に伝えることが、医療側の判断材料になります。観察し、伝えることが、介護職の役割なのです。
身体変化への対応
腹痛・嘔吐
腹痛は多くの病気で起こります。やってはいけない対応(温める・冷やす・鎮痛薬)と、嘔吐時の体位がポイントです。
- 腹痛=患部を温めたり冷やしたりしない・安易に鎮痛薬を使わない→速やかに医療機関へ
- 嘔吐=のどが詰まらないよう横向き(側臥位)に寝かせ、口の異物を取り出す
- 意識・呼吸状態が悪い、吐物に血が混じる→速やかに医療機関へ
- 激しい腹痛と嘔吐の繰り返し→イレウス(腸閉塞)/腹痛+発熱・下痢→食中毒・ノロウイルスを疑う
次は、腹痛と嘔吐への対応です。
腹痛は、多くの病気で起こります。やってはいけないのが、患部を温めたり冷やしたりすること、そして、安易に鎮痛薬を使うこと。これらは悪化のおそれがあるので避け、速やかに医療機関に連絡します。
嘔吐への対応。のどが詰まらないように、横向きの側臥位に寝かせ、口に残ったものを取り出します。
意識や呼吸の状態が悪いとき、あるいは、吐いたものに血が混じっているときは、速やかに医療機関に連絡します。
あわせて押さえたい鑑別。激しい腹痛と嘔吐を繰り返す場合は、腸が詰まるイレウス、腸閉塞。腹痛に、発熱や下痢が加わる場合は、食中毒やノロウイルス感染を疑います。
過去問。吐き気を訴える人を、誤嚥予防のために仰向けに寝かせる、は誤り。仰向けだと、吐いたもので窒息するおそれがあります。正しくは、横向きの側臥位。窒息防止のための体位、ここはよく問われます。
身体変化への対応
吐血・下血・喀血
血を吐く・血が出る症状は、どこからの出血かで呼び方が変わります。出血源と体位を結びつけて覚えます。
- 吐血=消化管出血で口から血を吐く(胃・十二指腸潰瘍、胃がんなど上部消化管)
- 下血=肛門から血。上部消化管出血では黒色のタール便、鮮紅色なら肛門に近い下部消化管
- 喀血=喉頭・気管・肺など気道系からの出血が口から出る
- 体位:喀血は出血側を下にした側臥位(健側への血液流入・窒息を防ぐ)。水や薬は飲ませない
次は、吐血、下血、喀血です。血が出る症状を整理します。
まず吐血。消化管からの出血で、口から血を吐くこと。胃・十二指腸潰瘍や、胃がんなど、上部消化管の病気で起こります。
下血は、肛門から血が出ること。上部消化管からの出血では、血が黒く変化して、黒色のタール便になります。一方、鮮やかな紅色なら、肛門に近い、下部消化管からの出血です。色で出血源を見分けます。
喀血は、喉頭、気管、肺など、気道系からの出血が、気道を通って口から出ることをいいます。吐血が消化管、喀血が気道、と区別しましょう。
体位の対応。喀血では、出血している側を下にした側臥位にします。健康な側の肺に血が流れ込んで窒息するのを防ぐためです。そして、いずれの場合も、水や薬は飲ませません。
過去問。血圧低下とともに大量の黒色便が出たが、鮮紅色ではないので問題ないと判断した、は誤り。黒色のタール便は、胃や十二指腸からの、かなりの出血のサインです。胃カメラなどの検査が必要です。
身体変化への対応
呼吸不全(呼吸の変化)
呼吸困難や息切れは多くの病気でみられますが、突然起こった・いつもと違うときは緊急性が高い。落ち着いて楽な姿勢を取らせます。
- 呼吸困難・息切れは多くの疾患でみられる症状
- 突然起こった・ようすがいつもと違う→緊急性が高い(人工呼吸や気道確保が必要なことも)
- 緊急性が高くないとき=座位など、本人が呼吸の楽な姿勢をとらせる
- 第29講の特徴的な呼吸(起座呼吸=左心不全 など)も思い出して、原因を推測
身体変化への対応の最後は、呼吸不全、呼吸の変化です。
呼吸困難や息切れは、多くの病気でみられる症状です。
ただし、それが突然起こった場合や、ようすがいつもと違う場合は、緊急性が高くなります。人工呼吸や気道確保が必要になることもあります。
緊急性が高くないときは、座った姿勢、座位など、本人が呼吸の楽になる姿勢をとらせます。
ここで、第29講で学んだ、特徴的な呼吸も思い出しましょう。起座呼吸なら左心不全、というように、呼吸の型から原因を推測できます。
なぜ座位が楽なのか。横になるより、座ったほうが、横隔膜が下がって肺が広がり、呼吸が楽になります。だから、苦しいときは座位や半座位が基本。第29講の心不全の起座呼吸と、同じ理屈です。
おつかれさまでした
第31講 まとめ
おつかれさまでした。急変時の対応は、「悪化させず、正しく医療につなぐ」が一貫したテーマ。数字とひっかけで総整理しましょう。
- 止血=心臓に近い側を圧迫し患部を高く/吐き気・嘔吐=横向き(側臥位)
- 胸骨圧迫=約5cm・1分間100〜120回/窒息=背部叩打法・ハイムリック法
- やけど=15〜30分冷やす・衣服の上から/溺水=入浴中(ヒートショック)/黒色タール便=上部消化管出血で検査必要
- 誤薬で低血糖=ブドウ糖・砂糖/意識がなければ吐かせず救急車
おつかれさまでした。第31講のまとめです。急変時の対応は、悪化させず、正しく医療につなぐ、が一貫したテーマでした。数字とひっかけで、総整理しましょう。
まず、体位と止血。出血は、心臓に近い側を圧迫し、患部を高く上げる。吐き気や嘔吐のときは、窒息を防ぐため、横向きの側臥位。
次に、救命処置。胸骨圧迫は、約5センチ沈む強さで、1分間に100回から120回。窒息には、背部叩打法と、腹部突き上げ法、ハイムリック法です。
そして、各事故のキーワード。やけどは、15分から30分冷やす、衣服の上から。溺水は、入浴中、ヒートショック。黒色のタール便は、上部消化管出血のサインで、検査が必要。
最後に、誤薬。糖尿病の薬による低血糖には、ブドウ糖や砂糖。そして、意識がなければ、吐かせず救急車。これらを確実に押さえましょう。
下の解説記事で、もう一度整理しておきましょう。次回もお楽しみに。
この講の一問一答(◯×12問・五肢複択2問)
すべてオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。答えは「答えと解説」を開くと出ます。全82講ぶんをまとめて解く →
激しく出血しているときは、出血部位より心臓に近い側を圧迫し、患部を心臓より高くする。
答えと解説
◯ ○。血液は心臓から末梢へ流れるため、出血点より心臓に近い側(上流)を圧迫し、患部を高くして血流を弱める。
頭部を打って記憶障害や嘔吐がみられる場合は、頭蓋内出血が疑われ検査が必要である。
答えと解説
◯ ○。両手足の脱力・しびれがあれば頸椎損傷の疑いで、動かさないようにする。
骨が皮膚から出ている開放骨折では、感染予防のため元の位置に戻してから固定する。
答えと解説
✕ ×。感染のおそれがあるので触れない。動かさず固定して医療機関へ。
高齢者は、窒息していても苦しがらず、じっとしていることがある。
答えと解説
◯ ○。チョークサインが出ないこともあり、様子の変化に注意する。
食物による窒息で、腹部突き上げ法(ハイムリック法)を行うことがある。
答えと解説
◯ ○(第22回類問)。臓器を傷つけることがあるため、行った場合は医療機関に伝える。
薬を誤って多く飲み、意識がない場合は、まず吐かせる。
答えと解説
✕ ×。意識がない場合は吐かせず、呼吸しやすい体位にして救急車を呼ぶ。
衣服の下をやけどした場合は、すぐに衣服を脱がせてから冷やす。
答えと解説
✕ ×。脱がすと痛みの増強や出血のおそれがあるため、衣服の上から冷やす。
高齢者の溺水の多くは、入浴中に浴槽内で発生する。
答えと解説
◯ ○。血圧変動(ヒートショック)による心筋梗塞・脳血管障害が背景にある。
心肺蘇生は、医療職でなければ行ってはならない。
答えと解説
✕ ×。胸骨圧迫と人工呼吸による一次救命処置で、誰でも行える。
心肺蘇生時の胸骨圧迫は、1分間に60回を目安に行う。
答えと解説
✕ ×(第26回類問)。胸が約5cm沈む強さで、1分間に100〜120回のテンポで行う。
吐き気を訴える人は、誤嚥予防のため仰向け(仰臥位)に寝かせる。
答えと解説
✕ ×(第28回類問)。仰向けは吐物で窒息のおそれ。横向き(側臥位)にする。
血圧低下とともに大量の黒色便を認めた場合、鮮紅色でなければ問題ないと判断してよい。
答えと解説
✕ ×(第18回類問)。黒色のタール便は上部消化管の相当な出血で、検査が必要。
五肢複択
急変時の対応として、適切なものを2つ選べ。
- 激しい出血では、出血部位より心臓から遠い側を圧迫する
- 嘔吐があるときは、横向き(側臥位)にして窒息を防ぐ
- 範囲の狭いやけどは、冷水で15〜30分冷やす
- 誤薬で意識がないときは、ただちに吐かせる
- 頭部打撲で手足のしびれがあれば、すぐに座らせて動かす
答えと解説
正解:2・3
1 誤り。心臓に近い側を圧迫し、患部を高くする。
2 正しい。仰向けは吐物で窒息のおそれがあるため側臥位にする。
3 正しい。衣服の下は脱がさず上から冷やす。広範囲は救急車。
4 誤り。意識がなければ吐かせず、呼吸しやすい体位にして救急車。
5 誤り。頸椎損傷の疑いがあり、動かすと悪化するので動かさない。
心肺蘇生・AEDについて、適切なものを2つ選べ。
- 胸骨圧迫は、胸が約5cm沈む強さで1分間に100〜120回行う
- 心停止が3分以上続いても、脳への影響はほとんどない
- 気道確保・人工呼吸は、訓練を受けていなければ行わなくてよい
- AEDは、医療従事者しか使用できない
- AEDが到着しても、心肺蘇生が終わるまでは使用しない
答えと解説
正解:1・3
1 正しい。胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を繰り返す。
2 誤り。3分以上で重大な脳障害が生じるため、少しでも早く開始する。
3 正しい。胸骨圧迫を優先する。
4 誤り。2004年から一般の人も使用できる。
5 誤り。到着したら指示どおり電気ショックを行い、ただちにCPRを再開する。