CH30
保健医療サービス分野 > 第34講

精神に障害のある場合の介護|うつ病・統合失調症・アルコール依存症のまとめ

🏠 トップ
📖 この講の全文を、文字で読む
👆
📋
「始める」を押すと、先生が声に出して解説します。
1 / 11
速さ 1.0×

保健医療サービス分野 > 第34講 精神に障害のある場合の介護|うつ病・統合失調症・アルコール依存症のまとめ/全文

この講で先生が話す内容を、そのまま文章にしたものです。音声を聞けないときや、あとから読み返したいときにどうぞ。上のスライドと同じ内容です。

CH2 SEC9

第34講 精神に障害のある場合の介護

高齢者の精神疾患は、成人とは違う現れ方をします。この講では、うつ病・統合失調症・アルコール関連問題と、その人に合わせた介護の留意点を学びます。

第34講を始めましょう。テーマは、精神に障害のある場合の介護です。

高齢者の精神疾患は、成人とは違う現れ方をします。この講では、うつ病、統合失調症、アルコール関連問題と、その人に合わせた介護の留意点を学びます。

まず、高齢者の精神疾患の特徴。非定型であることや、身体や薬の影響を受けやすいことです。

次に、高齢者に多い精神障害。うつ病、統合失調症、そしてアルコール関連問題の3つです。

そのなかで、陽性症状と陰性症状の区別や、若年発症と老年発症の違いなど、頻出の論点を押さえます。

最後に、疾患ごとの介護の留意点。自尊心への配慮、安全の確保、自助グループの活用などです。それでは始めましょう。

総論

高齢者の精神疾患の特徴

高齢者の精神疾患は、症状がはっきりせず、身体や薬の影響を強く受けます。多くの要因が重なって症状が出ている、と考えます。

なぜ大事?症状があいまいで身体や薬の影響も受けるため、原因を1つに決めつけない。だから「複数の要因が重なる」前提で見立てる。

まず、総論。高齢者の精神疾患の特徴です。成人とは異なる、3つの特徴があります。

1つめ、非定型的。精神症状が、典型的ではなく、訴えは多彩で、あいまいです。

2つめ、身体症状との関連。身体の予備力が低下しているため、ささいな不調が精神症状に影響したり、適応力の衰えにより、わずかな環境変化が、混乱や精神症状を引き起こすこともあります。

3つめ、薬の影響。薬の吸収や代謝の機能が低下するため、身体疾患の治療薬で、精神症状が生じることもあります。

これらをふまえ、高齢者の精神疾患では、多くの要因が重なって、症状を引き起こしている可能性を、念頭においておく必要があります。

なぜ大事か。症状があいまいで、身体や薬の影響も受けるため、原因を1つに決めつけない。だから、複数の要因が重なる、という前提で見立てることが大切です。

高齢者に多い精神障害

うつ病①(特徴・認知症との違い)

高齢者のうつ病は、認知症と間違われやすいのが大きな特徴。気分の落ち込みより、不安・緊張・焦燥が前面に出ます。

うつ?認知症?「もの忘れ」に見えても、集中力・判断力の低下が主なら、うつ病のことがある。見分けが治療開始の分かれ目になる。

ここからは、高齢者に多い精神障害です。1つめ、うつ病。重要なので2枚に分けます。

うつ病とは、精神的なエネルギーが低下し、憂うつ感や悲哀感が高まり、全身の倦怠感が生じて、自発性がなくなる疾患です。

高齢者のうつ病では、集中力や判断力の低下だけがめだつことがあります。そのため、認知症と判断されて、診断や治療が遅れることがあるので、注意が必要です。

また、気分の落ち込みよりも、不安や緊張、焦りである焦燥が、前面に出るのも特徴です。

次のスライドで、症状が悪化したときに現れる妄想と、自殺予防について学びます。

うつか、認知症か。もの忘れのように見えても、集中力や判断力の低下が主であれば、うつ病のことがあります。この見分けが、治療開始の分かれ目になります。

高齢者に多い精神障害

うつ病②(妄想・希死念慮・治療)

悪化すると3つの妄想が現れ、希死念慮が強まることも。自殺予防と、環境調整を中心とした治療が大切です。

過去問(第28回)「老年期うつ病では、妄想の症状が生じることはない」は誤り。罪業・貧困・心気の3妄想が現れることがある。

うつ病の2枚目。妄想、希死念慮、そして治療です。

症状が長引き、悪化すると、3つの妄想が現れることがあります。自分を責める罪業妄想、お金がなく生活できないという貧困妄想、そして、重い病気にかかっているという心気妄想です。

また、悲観して、死にたいという希死念慮が強まることもあるので、自殺予防も重要です。

治療は、環境調整を主とし、必要に応じて、薬物療法や精神療法などを行います。

介護では、励まし過ぎず、自尊心を傷つけない配慮が大切です。これは、のちほどの留意点で、詳しく扱います。

過去問です。老年期うつ病では、妄想の症状が生じることはない、は誤り。悪化すると、罪業妄想、貧困妄想、心気妄想の、3つの妄想が現れることがあります。

高齢者に多い精神障害

統合失調症①(陽性症状と陰性症状)

統合失調症は原因がまだ明らかでない精神疾患。症状は陽性症状陰性症状の2つに分けて理解します。ここが頻出です。

過去問(第26回)「統合失調症の陰性症状とは、妄想や幻覚をいう」は誤り。妄想・幻覚は陽性症状。陰性症状は感情や気力がなくなる症状。

2つめ、統合失調症です。2枚に分けます。まずは、症状から。

統合失調症は、原因がまだ明らかになっていない精神疾患です。症状は、陽性症状と陰性症状の、2つに分けて理解します。

陽性症状とは、本来はないものが、あるように感じる症状。幻覚、妄想、思考がまとまらない滅裂思考などです。

陰性症状とは、本来はあるもの、つまり感情や気力などが、なくなってしまう症状。感情鈍麻、自閉、無気力などです。

覚え方。陽性は、あるはずのないものが、プラスされる。陰性は、あるはずのものが、マイナスされる。プラスマイナスで、イメージしましょう。

過去問です。統合失調症の陰性症状とは、妄想や幻覚をいう、は誤り。妄想や幻覚は、陽性症状です。陰性症状は、感情や気力などがなくなってしまう症状。ここは取り違えやすいので注意。

高齢者に多い精神障害

統合失調症②(経過・治療)

発症は若年が多く、高齢での新規発症はまれ。ただし、若いころ発症した人が高齢で再発することがあります。

高齢期のポイント高齢で初めて発症はまれだが「昔発症→再発」はある。喪失や環境変化が引き金になる、と理解する。

統合失調症の2枚目。経過と治療です。

発症は、若年でのものが多く、40歳以上での発症は、まれです。

ただし、若年で発症して、いったん軽快していた人が、近親者の死や、生活環境の変化などをきっかけに、高齢になって再発するケースもあります。

治療は、抗精神病薬による薬物療法が中心です。

これに加えて、精神療法、作業療法、そして、社会生活技能訓練、SSTなどがあります。

高齢期のポイント。高齢で初めて発症するのはまれですが、昔発症して再発する、ということはあります。喪失体験や環境の変化が、引き金になる、と理解しましょう。

高齢者に多い精神障害

アルコール関連問題①(原因・発症型)

アルコール飲用による身体的・精神的・社会的な障害。代表がアルコール依存症若年発症型と老年発症型の違いが問われます。

対比で覚える若年発症=遺伝・家族歴/老年発症=孤立・喪失(環境)。どちらに遺伝要因があるか、がよく問われる。

3つめ、アルコール関連問題です。2枚に分けます。まずは、原因と発症型から。

アルコール関連問題とは、アルコールの飲用で引き起こされる、身体的、精神的、社会的な障害のこと。代表的なものに、アルコール依存症があります。

高齢になると、身体機能の低下などのために、若い人に比べて酔いやすく、身体症状が出やすくなり、アルコール依存症になりやすい傾向があります。

ここが頻出。若年発症型のアルコール依存症では、家族歴や遺伝的要因を有することが多いです。

一方、老年発症型では、そうした遺伝的な要因はなく、退職や、近親者との死別などによる、社会的孤立や喪失体験といった、環境の変化による発症が、多くみられます。

対比で覚えましょう。若年発症は、遺伝や家族歴。老年発症は、孤立や喪失、つまり環境。どちらに遺伝的要因があるか、がよく問われます。

高齢者に多い精神障害

アルコール関連問題②(特徴・治療)

高齢者の依存症は離脱症状が長引き、身体合併症や認知症・うつの合併が多い。治療は離脱治療→依存治療の2段階です。

2段階で覚えるまず体を立て直す「離脱治療(解毒)」→次に飲まない生活へ「依存治療(ARP)」。順番が大切。

アルコール関連問題の2枚目。特徴と治療です。

高齢者のアルコール依存症では、離脱症状、これは体内のアルコール濃度が低下したときに出現する、多様な症状ですが、これが、手のふるえ、発汗、吐き気、嘔吐などの自律神経症状となって、長く続きます。

また、身体の合併症が発生しやすく、認知症やうつ病を合併する割合も高い、という特徴があります。

治療は、2段階に分けて行います。まず、離脱症状の治療、離脱治療。身体合併症が悪化することが多いので、入院して、解毒を行います。その後に、依存治療を行います。

依存治療では、アルコール依存症リハビリテーションプログラム、ARPなどを用いて、教育を通して病識を得るようにし、アルコールのない生活を、イメージできるようにします。

2段階で覚えましょう。まず、体を立て直す、離脱治療、解毒。次に、飲まない生活へ向かう、依存治療、ARP。この順番が大切です。

介護の留意点

精神に障害のある高齢者の介護(共通)

基本は通常の高齢者の介護と同じ。ただし、これまで偏見や差別にさらされ自尊心が傷ついてきた背景に、配慮が必要です。

かかわりの基本押しつけにならず、本人に心地よい体験となる支援を。自尊心を守る、が共通の軸。

ここからは、精神に障害のある高齢者の、介護の留意点です。まずは、共通の留意点から。

基本は、通常の高齢者の介護と同じです。ただし、精神疾患がある人は、それまでの生活体験のなかで、偏見や差別にさらされ、自尊心がそこなわれてきたことも多いのです。

そのため、その人に合わせた配慮が必要となります。また、関係性を築くことが、難しい場合もあります。

そして、服薬している場合は、薬の影響で、ふらつき、めまい、便秘などの副作用が起こることも多いため、転倒防止に注意が必要です。

精神に障害のある高齢者の介護では、介護者などのかかわり方が、大きな影響を及ぼすことがあります。次のスライドで、疾患ごとの留意点を見ます。

かかわりの基本です。押しつけにならず、本人にとって心地よい体験となるような支援を心がける。自尊心を守る、が共通の軸です。

介護の留意点

疾患別の介護の留意点

疾患ごとに、かかわり方のコツが違います。うつ病・統合失調症・アルコール依存症の留意点を整理します。

AAとはAlcoholics Anonymous(アルコホーリクス・アノニマス)。匿名のアルコール依存症者の自助グループ。断酒会とともに参加継続を支える。

疾患別の、介護の留意点です。3つの疾患それぞれで、かかわり方のコツが違います。

まず、うつ病。自分で何かすることを勧めたり、励ましたりすることは避け、自尊心を傷つけない配慮をしながら、日常生活を支援します。とくに、病気の初期や、回復期の自殺企図に、注意が必要です。

次に、統合失調症。こだわりや妄想症状などの言動を、制止すると、興奮することがあります。だから、安全を最優先としてかかわり、安心感を届ける工夫をします。

そして、アルコール依存症。身体疾患の治療を勧め、環境を調整して、飲酒の機会を避けるようにします。断酒会や、AAなどの自助グループへの、参加の継続を支援します。

なお、アルコール依存症では、飲酒しているときのかかわりなどは、避けるようにします。

AAとは、アルコホーリクス・アノニマスの略。匿名の、アルコール依存症者の自助グループです。断酒会とともに、参加の継続を支えます。

おつかれさまでした

第34講 まとめ

おつかれさまでした。高齢者の精神疾患の違いと、かかわり方を総点検しましょう。陽性・陰性、発症型のひっかけが頻出です。

おつかれさまでした。第34講のまとめです。高齢者の精神疾患の、違いと、かかわり方を、総点検しましょう。

まず、うつ病。認知症と紛らわしく、悪化すると罪業、貧困、心気の3妄想が現れ、希死念慮も。妄想は生じない、は誤りでしたね。

次に、統合失調症。陽性症状は幻覚・妄想、陰性症状は感情や気力の低下。若年発症が多く、治療にSST。陽性と陰性を、取り違えないように。

そして、アルコール。若年発症は遺伝、老年発症は孤立や喪失。治療は、離脱治療から、依存治療へ。

介護の軸は、自尊心を守ること。うつは励まし過ぎない、統合失調症は妄想を制止しない、アルコールは自助グループの参加を支える。これらを押さえましょう。

下の解説記事で、もう一度整理しておきましょう。次回もお楽しみに。

この講の一問一答(◯×11問・五肢複択2問)

すべてオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。答えは「答えと解説」を開くと出ます。全82講ぶんをまとめて解く →

  1. 高齢者の精神疾患は、身体疾患の治療薬によって精神症状が生じることがある。

    答えと解説

     ○。薬の吸収や代謝の機能が低下するため。症状は非定型的で訴えが多彩。

  2. 高齢者のうつ病は、認知症と間違われることがある。

    答えと解説

     ○。集中力・判断力の低下だけがめだち、診断・治療が遅れることもある。

  3. 老年期うつ病では、妄想の症状が生じることはない。

    答えと解説

     ×(第28回類問)。悪化すると罪業妄想・貧困妄想・心気妄想が現れることがある。

  4. 高齢者のうつ病では、気分の落ち込みより不安・緊張・焦燥が前面に出ることがある。

    答えと解説

     ○。希死念慮が強まることもあり、自殺予防が重要。

  5. 統合失調症の陰性症状とは、妄想や幻覚をいう。

    答えと解説

     ×(第26回類問)。妄想・幻覚は陽性症状。陰性症状は感情鈍麻・自閉・無気力など。

  6. 統合失調症は、若年での発症が多い。

    答えと解説

     ○。40歳以上での発症はまれ。喪失や環境変化で高齢期に再発することも。

  7. 統合失調症の治療には、社会生活技能訓練(SST)がある。

    答えと解説

     ○。抗精神病薬による薬物療法のほか、精神療法・作業療法・SSTなど。

  8. 老年発症型のアルコール依存症では、家族歴や遺伝的要因を有することが多い。

    答えと解説

     ×(第22回再類問)。それは若年発症型。老年発症型は社会的孤立・喪失体験など環境変化による。

  9. アルコール依存症の治療は、離脱治療の後に依存治療を行う。

    答えと解説

     ○。離脱治療は入院して解毒、依存治療はARPなどで病識を得る。

  10. 統合失調症のある人の妄想症状は、その都度強く制止する。

    答えと解説

     ×。制止すると興奮することがあるため、安全を最優先にかかわり安心感を届ける。

  11. 精神疾患のある高齢者では、服薬の副作用による転倒に注意する。

    答えと解説

     ○。ふらつき・めまい・便秘などの副作用が起こることが多い。

五肢複択

  1. 高齢者に多い精神障害について、適切なものを2つ選べ。

    • 高齢者のうつ病は、認知症と間違われることがある
    • 統合失調症の陰性症状とは、幻覚や妄想をいう
    • 統合失調症は、40歳以上での発症が多い
    • 老年期うつ病では、罪業妄想や貧困妄想が現れることがある
    • アルコール依存症の老年発症型は、遺伝的要因によるものが多い
    答えと解説

    正解:1・4

    1 正しい。集中力・判断力の低下がめだつため。

    2 誤り。幻覚や妄想は陽性症状。

    3 誤り。若年発症が多く、40歳以上での発症はまれ。

    4 正しい。心気妄想も現れることがある。

    5 誤り。老年発症型は社会的孤立・喪失体験など環境変化による。

  2. 精神疾患のある高齢者の介護について、適切なものを2つ選べ。

    • うつ病の人には、自分でするよう積極的に励まし、活動を強く促す
    • 統合失調症の妄想は、安全を最優先にかかわり、むやみに制止しない
    • アルコール依存症では、断酒会やAAなどの自助グループへの参加を支援する
    • 服薬の副作用による転倒の心配はないため、特別な配慮は不要である
    • 精神疾患のある人には、自尊心への配慮は不要である
    答えと解説

    正解:2・3

    1 誤り。励まし過ぎは避け、自尊心を傷つけない配慮をする。

    2 正しい。制止すると興奮することがある。

    3 正しい。飲酒機会を避ける環境調整も行う。

    4 誤り。ふらつき等の副作用で転倒に注意が必要。

    5 誤り。自尊心を傷つけない配慮が共通の軸。

▲ スライドに戻る

ケアマネ講座トップ / 一問一答 / まとめページ