保健医療サービス分野 > 第37講 薬の知識|高齢者の薬の代謝・服薬の留意点・副作用のまとめ/全文
この講で先生が話す内容を、そのまま文章にしたものです。音声を聞けないときや、あとから読み返したいときにどうぞ。上のスライドと同じ内容です。
CH2 SEC12
第37講 薬の知識
高齢者は服薬が欠かせない一方、薬の代謝が低下し効果や副作用が強く出がち。この講では代謝のしくみ・服薬の留意点・主な副作用を学びます。
- 薬の代謝=高齢者は代謝が低下し、効果・副作用が強く出やすい
- 服薬時の留意点=飲み込み・飲み忘れ・誤服用への対応
- 主な薬剤と副作用(降圧薬・睡眠薬・抗凝固薬ほか)
- 頻出のワーファリン×ビタミンK・悪性症候群も押さえる
第37講を始めましょう。テーマは、薬の知識です。
高齢者は、複数の疾患などから、服薬が欠かせなくなることが多い一方で、薬の代謝が低下し、効果や副作用が強く出やすい、という特徴があります。この講では、代謝のしくみ、服薬の留意点、主な副作用を学びます。
まず、薬の代謝。高齢者は、薬の代謝が低下し、効果や副作用が、強く出やすくなります。
次に、服薬時の留意点。飲み込み、飲み忘れ、誤服用への対応です。
さらに、主な薬剤とその副作用。降圧薬、睡眠薬、抗凝固薬などです。
頻出の、ワーファリンとビタミンKの関係や、悪性症候群も、しっかり押さえましょう。それでは始めます。
薬の代謝
薬の代謝①(飲み込み・吸収)
薬は飲み込み→吸収→分布→代謝→排せつの流れをたどります。高齢者では各段階で機能が低下し、効きすぎや副作用につながります。まず前半です。
- 高齢になると服薬が増えるが、代謝の低下で効果・副作用が強く出ることがある
- 飲み込み=嚥下機能の低下でうまく飲めない/食道に薬がとどまり食道潰瘍を生じることも
- 吸収(胃や腸→血管)=血流量や消化吸収機能の低下で吸収が低下
- 次のスライドで、分布・代謝・排せつを見る
まず、薬の代謝です。薬は、飲み込み、吸収、分布、代謝、排せつ、という流れをたどります。高齢者では、各段階で機能が低下し、効きすぎや副作用につながります。前半の2段階から。
高齢になると、服薬が増えますが、代謝の低下によって、薬の効果や副作用が、強く出ることがあるため、注意が必要です。
1つめ、飲み込み。嚥下機能が低下していると、うまく飲み込みができなかったり、食道の途中に薬がとどまって、食道潰瘍を生じたりすることがあります。
2つめ、吸収。薬は、胃や腸で吸収され、血管に入ります。高齢者では、血流量や、消化吸収機能の低下で、薬物の吸収が低下します。
次のスライドで、残りの、分布、代謝、排せつを見ていきます。
5段階で整理しましょう。飲み込み、吸収、分布、代謝、排せつ。どの段階の機能低下が、どんな影響を生むかを、セットで覚えます。
薬の代謝
薬の代謝②(分布・代謝・排せつ)
後半は分布・代謝(肝臓)・排せつ(腎臓)。高齢者は肝・腎機能の低下で薬が体内に長くとどまり、効きすぎや蓄積が起こります。
- 分布=水分量低下で水溶性薬物の血中濃度が上昇/体脂肪増加で脂溶性薬物が蓄積しやすい
- 代謝(おもに肝臓で解毒)=肝機能低下で代謝が低下し血中濃度が上昇
- 排せつ(おもに腎臓から尿へ)=腎機能低下で体内に蓄積し作用が増強
- =薬が体内に長くとどまり、効果が必要以上に持続・効きすぎることがある
薬の代謝、後半です。分布、代謝、排せつを見ます。
3つめ、分布。薬は血流により全身に運ばれます。高齢者は、全身の水分量が低下するため、水に溶けやすい水溶性薬物の血中濃度が、上昇しやすくなります。また、体脂肪量が増加するため、脂に溶けやすい脂溶性薬物は、蓄積しやすくなります。
4つめ、代謝。薬は、おもに肝臓により解毒されます。肝機能の低下により、代謝が低下し、薬物の血中濃度が上昇します。
5つめ、排せつ。薬は、おもに腎臓により、尿として排出されます。腎機能の低下により、薬物が体内に蓄積され、作用が増強することがあります。
つまり、高齢者では、薬が体内に長くとどまり、効果が必要以上に持続したり、効きすぎてしまったりすることがあるのです。
過去問です。高齢者は腎機能が低下しているため、薬の副作用が減弱することが多い、は誤り。腎機能の低下で、薬物は体内に蓄積し、作用は、増強します。減弱、ではありません。
服薬の留意点
服薬時の留意点①(飲み込み)
服薬の留意点は飲み込み・飲み忘れ・誤服用の3つ。まず飲み込み=上半身を起こして多めの水で、食道潰瘍を防ぎます。
- 上半身を起こした姿勢で、多めの水またはぬるま湯で飲む(食道潰瘍の防止)
- 飲み込みが難しいカプセル・錠剤は勝手につぶさず、形の変更等を専門家に相談
- 薬が食道にとどまると潰瘍のおそれ→水をしっかりとる
- 次のスライドで、飲み忘れ・誤服用への対応を見る
ここからは、服薬時の留意点です。留意点は、飲み込み、飲み忘れ、誤服用の、3つ。まずは、飲み込みから。
薬は、上半身を起こした姿勢で、多めの水、または、ぬるま湯で飲みます。これは、食道潰瘍を防止するためです。
また、飲み込みが難しいカプセルや錠剤などの場合、勝手につぶしたりせず、形の変更などを、専門家に相談します。薬によっては、つぶすと効果が変わるものがあるためです。
薬が食道にとどまると、潰瘍を引き起こすおそれがあるので、できるだけ、水をしっかりとることが大切です。
次のスライドで、飲み忘れと、誤服用への対応を見ていきます。
過去問です。上半身を起こし、多めの水で薬を服用することが、食道潰瘍の予防につながる、は正しい。横になったままや、少ない水では、薬が食道にとどまりやすくなります。
服薬の留意点
服薬時の留意点②(飲み忘れ・誤服用)
薬の種類が増えると飲み忘れ・二重服薬・誤服用が起こりがち。対策の中心は一包化と服薬カレンダーです。
- 慢性疾患などで薬の種類・回数が増えると、飲み忘れ・二重服薬が増える傾向
- 一包化=1回分ずつまとめる(処方時に病院でまとめてくれることも)。飲み忘れ・誤服用の両方に有効
- 服薬カレンダー=1回分ずつ収納でき、介護者も気づきやすい/飲み忘れた場合の対応も確認
- 誤服用は認知機能・視覚の低下でも起こる→一包化は包装シートの誤飲防止にも有効
服薬の留意点、2枚目。飲み忘れと、誤服用への対応です。
慢性疾患などで、一度に飲む薬の種類や回数が増えると、飲み忘れや、二重に飲んでしまう二重服薬が、増える傾向があります。
対策の中心が、一包化です。1回分ずつ、小分けにしてまとめておくと、わかりやすくなります。処方のときに、1回分をまとめて、一包にしてくれる病院などもあります。
また、服薬カレンダー。小袋がついていて、1回分ずつ薬を収納できるカレンダーです。これを利用すると、介護者も、飲み忘れに気づきやすくなります。飲み忘れた場合に、どうすればよいかも、確認しておきます。
誤服用は、認知機能の低下や、視覚の衰えなどでも起こります。一包化は、飲み忘れ防止と同様に有効で、さらに、薬の包装シートを、誤って飲み込んでしまう誤飲の防止にも、効果的です。
一包化が効く理由です。バラのシートだと、飲み忘れ、二重服薬、シートごとの誤飲が起こりやすい。1回分にまとめると、本人も介護者も、確認しやすくなります。
薬の副作用
薬の副作用①(降圧薬・血糖降下薬・利尿薬)
高齢者によく処方される薬と副作用を押さえます。まず降圧薬・血糖降下薬・利尿薬。降圧薬のふらつき・転倒が頻出です。
- 降圧薬=血圧低下・起立性低血圧・めまい・ふらつき(→転倒の原因)
- 血糖降下薬=低血糖
- 利尿薬=口渇・脱水症状
- いずれも高齢者では作用が強く出やすい→転倒・脱水・低血糖に注意
ここからは、薬の副作用です。高齢者に処方されることの多い薬剤と、その副作用を押さえます。まずは、降圧薬、血糖降下薬、利尿薬から。
降圧薬は、血圧を下げる薬です。副作用として、血圧低下、起立性低血圧、めまい、ふらつきがあります。これらは、転倒の原因になりやすいので注意です。
血糖降下薬は、血糖値を下げる薬です。副作用として、低血糖があります。
利尿薬は、尿の排出を促す薬です。副作用として、口渇、のどの渇きや、脱水症状があります。
いずれも、高齢者では作用が強く出やすいので、転倒、脱水、低血糖に、注意が必要です。
過去問です。降圧剤を内服中の高齢者は、薬の作用により転倒しやすい、は正しい。降圧剤の副作用には、起立性低血圧やめまいがあり、転倒の原因となりやすいのです。
薬の副作用
薬の副作用②(消炎鎮痛薬・抗凝固薬)
続いて消炎鎮痛薬と抗血小板薬・抗凝固薬。とくにワーファリンとビタミンKの関係は最頻出です。
- 消炎鎮痛薬=食欲不振・吐き気・腎障害など
- 抗血小板薬・抗凝固薬=血を固まりにくくする→出血傾向
- ワーファリンは、ビタミンKを含む食品(納豆・青汁・クロレラ)で効果が消失する
- =抗凝固薬を飲む人は、納豆などビタミンKの多い食品に注意
薬の副作用、2枚目。消炎鎮痛薬と、抗血小板薬・抗凝固薬です。
消炎鎮痛薬は、炎症や痛みをやわらげる薬です。副作用として、食欲不振、吐き気、腎障害などがあります。
抗血小板薬や、抗凝固薬は、血を固まりにくくする薬です。副作用として、出血傾向、つまり血が止まりにくくなることがあります。
ここが最頻出。抗凝固薬であるワーファリンは、ビタミンKを含む食品、たとえば、納豆、青汁、クロレラなどを飲食すると、薬の効果が消失してしまいます。
ですから、ワーファリンなどの抗凝固薬を飲んでいる人は、納豆など、ビタミンKの多い食品に、注意が必要です。
なぜ納豆がだめなのか。ワーファリンは、ビタミンKの働きを抑えて、血を固まりにくくする薬です。納豆などで、ビタミンKをとると、薬の効果が、打ち消されてしまうのです。
薬の副作用
薬の副作用③(睡眠薬・抗パーキンソン病薬ほか)
残りは睡眠薬・抗不安薬・抗うつ薬・抗パーキンソン病薬。睡眠薬のふらつき・転倒、抗パーキンソン病薬の急な中止に注意です。
- 睡眠薬=ふらつき・転倒
- 抗不安薬・抗うつ薬=口渇・便秘・頻脈・ふらつき・眠気・排尿障害・嚥下障害など
- 抗パーキンソン病薬=口渇・便秘・頻脈・ふらつき・眠気・排尿障害・嚥下障害など
- 抗パーキンソン病薬は急激な服用中止で悪性症候群のおそれ(次スライド)
薬の副作用、3枚目。睡眠薬、抗不安薬・抗うつ薬、そして、抗パーキンソン病薬です。
睡眠薬の副作用は、ふらつき、転倒です。
抗不安薬や、抗うつ薬の副作用には、口渇、便秘、頻脈、ふらつき、眠気、排尿障害、嚥下障害などがあります。
抗パーキンソン病薬の副作用にも、口渇、便秘、頻脈、ふらつき、眠気、排尿障害、嚥下障害などがあります。
そして、抗パーキンソン病薬で、とくに注意すべきは、急激に服用を中止すると、悪性症候群を起こすおそれがあること。これは、次のスライドで、詳しく見ます。
転倒に注意する薬を、まとめておきましょう。降圧薬、睡眠薬、抗不安薬など、ふらつきを起こす薬は、転倒リスクがあります。高齢者では、骨折から寝たきりに、つながりやすいので、注意が必要です。
薬の副作用
悪性症候群(要注意の副作用)
最後に、命にかかわることもある悪性症候群。抗パーキンソン病薬の急な中止や抗精神病薬などで起こります。
- 症状=発熱・発汗・頻脈・パーキンソン症状など
- 原因=抗パーキンソン病薬の急な中止のほか、抗精神病薬などの副作用でも生じる
- 重症では集中治療が必要なことも。脱水症状や呼吸障害を併発すると死亡のおそれ
- =処方された薬は、自己判断で急に中止しないことが大切
薬の副作用の最後に、悪性症候群を取り上げます。命にかかわることもある、要注意の副作用です。
悪性症候群の症状は、発熱、発汗、頻脈、そして、パーキンソン症状などが生じます。
原因は、抗パーキンソン病薬の、急な中止のほか、抗精神病薬などの副作用でも、生じます。
重症では、集中治療が必要な場合もあり、脱水症状や、呼吸障害などを併発すると、死亡のおそれもあります。
ですから、処方された薬は、自己判断で、急に中止しないことが、とても大切です。
介護職の視点です。発熱、発汗、ふるえなどが急に現れたら、薬の中止や変更がなかったかを確認し、すみやかに医療職へ伝えます。自己判断での中断は、危険です。
おつかれさまでした
第37講 まとめ
おつかれさまでした。薬の代謝・服薬の留意点・主な副作用を総点検しましょう。代謝低下と、ワーファリン、悪性症候群が頻出です。
- 代謝=高齢者は肝・腎機能の低下で薬が蓄積し作用が増強(減弱ではない)
- 服薬=上半身を起こし多めの水(食道潰瘍防止)/飲み忘れ・誤服用は一包化・服薬カレンダー
- 副作用=降圧薬/睡眠薬=ふらつき・転倒/血糖降下薬=低血糖/ワーファリン×ビタミンK(納豆)
- 抗パーキンソン病薬の急な中止→悪性症候群(発熱・発汗・パーキンソン症状)
おつかれさまでした。第37講のまとめです。薬の代謝、服薬の留意点、主な副作用を、総点検しましょう。
まず、代謝。高齢者は、肝機能や腎機能の低下で、薬が体内に蓄積し、作用が増強します。減弱、ではありませんでしたね。
服薬は、上半身を起こし、多めの水で。食道潰瘍の防止です。飲み忘れや誤服用には、一包化や、服薬カレンダー。
副作用。降圧薬や睡眠薬は、ふらつき、転倒。血糖降下薬は、低血糖。そして、ワーファリンは、ビタミンKを含む納豆などで、効果が消失します。
さらに、抗パーキンソン病薬の、急な中止で、悪性症候群。発熱、発汗、パーキンソン症状などが生じます。これらを押さえましょう。
下の解説記事で、もう一度整理しておきましょう。次回もお楽しみに。
この講の一問一答(◯×11問・五肢複択2問)
すべてオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。答えは「答えと解説」を開くと出ます。全82講ぶんをまとめて解く →
高齢者は、薬の代謝が低下し、効果や副作用が強く出やすい。
答えと解説
◯ ○。肝・腎機能の低下で薬が体内に長くとどまる。
高齢者は腎機能が低下しているため、薬の副作用が減弱することが多い。
答えと解説
✕ ×(第28回類問)。腎機能低下で薬物が蓄積し、作用は増強する。
嚥下機能が低下していると、薬が食道にとどまり食道潰瘍を生じることがある。
答えと解説
◯ ○。上半身を起こし多めの水で服用して予防する。
薬は、おもに肝臓で代謝(解毒)され、おもに腎臓から尿として排せつされる。
答えと解説
◯ ○。肝機能・腎機能の低下で薬物の血中濃度が上昇する。
上半身を起こし、多めの水で薬を服用することは、食道潰瘍の予防につながる。
答えと解説
◯ ○(第19回類問)。横になったままや少ない水は薬が食道にとどまりやすい。
飲み込みにくい錠剤は、介護者の判断でつぶして飲ませてよい。
答えと解説
✕ ×。勝手につぶさず、形の変更等を専門家に相談する。つぶすと効果が変わる薬がある。
一包化は、飲み忘れだけでなく、薬の包装シートの誤飲防止にも効果的である。
答えと解説
◯ ○。1回分ずつまとめることで本人も介護者も確認しやすい。
降圧剤を内服中の高齢者は、薬の作用により転倒しやすい。
答えと解説
◯ ○(第18回類問)。起立性低血圧やめまいが転倒の原因になる。
ワーファリンは、納豆など、ビタミンKを含む食品で効果が消失する。
答えと解説
◯ ○。ワーファリンはビタミンKの働きを抑える薬。青汁・クロレラも注意。
血糖降下薬の副作用として、低血糖がある。
答えと解説
◯ ○。利尿薬は口渇・脱水、睡眠薬はふらつき・転倒。
抗パーキンソン病薬を急に中止すると、悪性症候群を起こすおそれがある。
答えと解説
◯ ○。発熱・発汗・パーキンソン症状など。抗精神病薬の副作用でも生じる。
五肢複択
高齢者の薬の代謝・服薬について、適切なものを2つ選べ。
- 高齢者は肝・腎機能の低下で、薬が体内に蓄積し作用が増強することがある
- 腎機能の低下により、薬の作用は減弱することが多い
- 薬は上半身を起こし、多めの水で服用すると食道潰瘍の予防になる
- 飲み込みにくい錠剤は、介護者の判断でつぶしてよい
- 薬は少量の水で、横になったまま飲むのが望ましい
答えと解説
正解:1・3
1 正しい。肝・腎機能の低下で薬が長くとどまる。
2 誤り。蓄積して作用は増強する。
3 正しい。食道潰瘍の防止になる。
4 誤り。勝手につぶさず専門家に相談する。
5 誤り。上半身を起こし多めの水で飲む。
高齢者に処方される薬と副作用について、適切なものを2つ選べ。
- 降圧薬の副作用に、起立性低血圧やふらつきがある
- ワーファリンは、ビタミンKを含む食品で効果が増強する
- 血糖降下薬の副作用に、低血糖がある
- 睡眠薬には、ふらつきや転倒の副作用はない
- 抗パーキンソン病薬は、急に中止しても問題ない
答えと解説
正解:1・3
1 正しい。転倒の原因になりやすい。
2 誤り。ビタミンKでワーファリンの効果は消失する。
3 正しい。低血糖に注意。
4 誤り。睡眠薬はふらつき・転倒に注意。
5 誤り。急な中止で悪性症候群のおそれがある。