保健医療サービス分野 > 第39講 排せつの介護|排せつのしくみと障害・自立を支える用具の選択/全文
この講で先生が話す内容を、そのまま文章にしたものです。音声を聞けないときや、あとから読み返したいときにどうぞ。上のスライドと同じ内容です。
CH2 SEC14
第39講 排せつの介護
排せつは生命維持に欠かせない行為であると同時に、最もプライベートな行為です。この講では「排せつのしくみと障害」「排せつ介護の基本(羞恥心・用具選択・誘導・介護者支援)」を学びます。
- ①排せつのしくみと、排せつ障害の分類(排尿障害・排便障害)
- ②排せつ介護の基本(羞恥心への配慮・用具の選択)
- ③排尿排便コントロール・介護者への援助と福祉用具
第39講を始めましょう。テーマは、排せつの介護です。
排せつは生命維持に欠かせない行為であると同時に、最もプライベートな行為でもあります。この講では、排せつのしくみと障害、そして排せつ介護の基本を学びます。
今日のゴールは3つです。
1つめ、排せつのしくみと、排せつ障害の分類。排尿障害と排便障害です。
2つめ、排せつ介護の基本。羞恥心への配慮と、用具の選択です。
3つめ、排尿・排便のコントロールと、介護者への援助、そして福祉用具です。
排せつの機能
排せつのしくみ
排せつとは、体内の不要な老廃物を体外に排出すること。便と尿で、できるしくみが違います。
- 便:食べ物が消化され、栄養・水分が吸収されて便に→直腸の内圧が一定になると排便反射で排せつ
- 尿:栄養が代謝され、老廃物を腎臓でろ過→膀胱にたまる→膀胱内圧が上がると脳に伝わり尿意
まず、排せつのしくみです。
排せつとは、体内で不要になった老廃物を、体外に排出することをいいます。便と尿では、できるしくみが少し違います。
便のほう。口から入った食べ物は、消化されながら小腸・大腸へ送られ、栄養分や水分が吸収されて便になります。直腸に入って内圧が一定になると、排便反射が起こって排せつされます。
尿のほう。吸収された栄養分は代謝され、不要になった老廃物が腎臓でろ過されて膀胱にためられます。膀胱の内圧が上がると、刺激が脳に伝わって、尿意が起こります。
排せつ障害
排せつに必要な4つの行為
排せつをするためには、4つの行為が必要です。
1つめ、便意や尿意を知覚する。
2つめ、排せつ場所に移動する。
3つめ、衣類を着脱して姿勢を整える。4つめ、実際に排せつする、です。
この一連のどこかに支障が生じて、排せつの一部または全部に障害が出ることを、排せつ障害といいます。原因を考えるアセスメントが大切です。
障害の分類
排せつ障害①排尿障害
- 尿が漏れる=尿失禁
- 尿が出にくい・出ない=排尿困難・尿閉
- 回数が多い=頻尿
排せつ障害は、排尿障害と排便障害に分けられます。まずは排尿障害から。
尿が漏れるのが、尿失禁。
尿が出にくい、または出ないのが、排尿困難や尿閉。
そして、排尿の回数が多いのが、頻尿です。
排せつ障害には、その種類に応じた適切な対処と、適切な排せつ用具の使用が重要になります。
障害の分類
排せつ障害②排便障害
- 便が漏れる=便失禁
- 便が出にくい=便秘
- 便が水様で形がなくなる=下痢
- 回数が多い=頻便
次に、排便障害です。
便が漏れるのが、便失禁。
便が出にくいのが、便秘。
便が水様になって形がなくなった状態が、下痢。
そして、排便の回数が多いのが、頻便です。
排せつ介護の基本
排せつ介護の基本①羞恥心
排せつは日常生活動作の中でも、とくにプライベートな行為で、他人にゆだねたくないもの。だからこそ配慮が要ります。
- 羞恥心・自立心・自尊心に配慮する
- 可能なかぎり自立した排せつができるよう支援する
ここから排せつ介護の基本です。1つめは、羞恥心への配慮。
排せつは、日常生活動作のなかでも、とくにプライベートな行為であり、他人にゆだねたくないものです。
ですから、排せつの介護にあたっては、羞恥心や自立心、自尊心などに配慮します。
そして、可能なかぎり、本人が自立した排せつをできるように支援することが大切です。
用具の選択
排せつ介護の基本②用具選択(トイレ)
用具は「便意・尿意があるか」「自力で移動できるか」で選びます。まずは便意・尿意あり+移動できる場合。
- トイレ環境のアセスメント(手すり・介助スペースの有無、洋式か和式か、照明、床の素材など)を行い、必要に応じて整える
2つめは、排せつ用具の選択です。用具は、便意・尿意があるか、そして自力で移動できるかで選びます。
まず、便意・尿意があって、自力で移動が可能な場合は、トイレを使います。
このときは、トイレ環境のアセスメントを行います。手すりや介助スペースの有無、洋式か和式か、照明、床の素材などを確認し、必要に応じて整えます。
用具の選択
用具選択(ポータブルトイレ・便尿器)
次に、便意・尿意はあるけれど、自力で移動が困難な場合。このときは、ポータブルトイレを使います。
ポータブルトイレは、安定性や立ち上がりやすさを考えて適切なものを選びます。使うときは、消臭や消音に配慮し、プライバシーを保てる場所を確保します。
さらに、ベッドから離れられない、座位がとれない場合は、便尿器を使います。
用具の選択
用具選択(おむつ)とおむつ外し
- おむつは自尊心を傷つけ・依存心を高め・寝たきりの要因にもなり得る
- 安易な使用を避け、できるだけ「おむつ外し」に取り組む
そして、便意・尿意がない場合に使うのが、おむつです。
ただし、おむつは、自尊心を傷つけたり、依存心を高めたり、寝たきりの要因にもなり得ます。
ですから、安易な使用は避けて、できるだけ「おむつ外し」に取り組むことが大切です。
なお、ポータブルトイレやおむつには、いろいろな種類があります。理学療法士などと連携して、利用者の居住環境や日常生活動作に合ったものを選びます。
排せつ介護の基本
排尿・排便コントロール
- 排せつの間隔など排せつの状況を把握
- 食生活や身体活動を含めた生活リズムを整える
- 時間でトイレに誘導するなどして、排せつを適切にコントロール
3つめは、排尿・排便のコントロールです。
まず、排せつの間隔など、利用者の排せつの状況を把握します。
そして、食生活や身体活動を含めた生活リズムを整え、時間を見てトイレに誘導するなどして、排せつを適切にコントロールします。
なお、尿意がはっきりしていない場合は、本人の排尿の感覚に合わせて、まず昼間からトイレ誘導を始めます。
排せつ介護の基本
介護者への援助と福祉用具
排せつ介護は家族介護者に、腰痛・睡眠不足などの身体的負担や、外出制限などの精神的負担をもたらします。介護者への支援も必要です。
- 自動排泄処理装置(福祉用具貸与)=尿や便を自動で吸引。夜間の介助等を軽減(原則 要介護4・5)
- 排泄予測支援機器(特定福祉用具販売)=膀胱内の状態を感知し尿量を推定、排尿機会を通知(2022年度〜追加)
最後に、介護者への援助です。
排せつの介護は、家族介護者にとって、腰痛や睡眠不足などの身体的な負担、そして外出の制限などの精神的な負担を、及ぼすことが多いものです。介護者への配慮と支援も必要です。
介護保険で使える用具として、まず自動排泄処理装置。これは福祉用具貸与の種目で、尿や便を自動的に吸引してくれます。夜間の排せつ介助などで家族の負担を軽くします。原則、要介護4と5の人に限られます。
もう一つが、排泄予測支援機器。これは特定福祉用具販売の種目で、膀胱内の状態を感知して尿量を推定し、排尿のタイミングを本人や家族に通知します。2022年、令和4年度から追加されました。
おつかれさまでした
第39講 まとめ
- 排せつの4行為=知覚→移動→着脱・姿勢→排せつ/支障があれば排せつ障害
- 用具=便意尿意あり+移動可→トイレ/移動困難→ポータブルトイレ/離床不可→便尿器/便意尿意なし→おむつ(安易に使わずおむつ外し)
- 福祉用具=自動排泄処理装置(要介護4・5)/排泄予測支援機器(2022年度追加)
第39講のまとめです。
排せつに必要な行為は4つ。知覚、移動、着脱と姿勢、そして排せつ。このどこかに支障があると、排せつ障害でした。
用具の選び方。便意・尿意があって移動できればトイレ、移動が困難ならポータブルトイレ、ベッドから離れられないなら便尿器、便意・尿意がなければおむつ。ただし、おむつは安易に使わず、おむつ外しを目指します。
福祉用具は2つ。自動排泄処理装置は原則、要介護4・5。排泄予測支援機器は2022年度から追加されました。
おつかれさまでした。読んで復習したい人は、下の解説記事もどうぞ。
この講の一問一答(◯×12問・五肢複択2問)
すべてオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。答えは「答えと解説」を開くと出ます。全82講ぶんをまとめて解く →
排せつとは、体内で不要になった老廃物を体外に排出することをいう。
答えと解説
◯ ○。排せつは生命維持に欠かせない行為で、便と尿ではできるしくみが異なる。
食べ物は直腸に入って内圧が一定になると、排便反射が起こって排せつされる。
答えと解説
◯ ○。消化・吸収を経て便となり、直腸内圧が一定になると排便反射で排せつされる。
膀胱内圧が上昇しても刺激は脊髄でとどまり、尿意は起こらない。
答えと解説
✕ ×(脳に伝わる)。膀胱内圧が上がると刺激が脳に伝わり、尿意が起こる。
尿が出にくい、または出ない状態を尿失禁という。
答えと解説
✕ ×(排尿困難・尿閉)。尿失禁は尿が漏れること。出にくい・出ないのは排尿困難・尿閉。
便が水様となり形がなくなった状態を便秘という。
答えと解説
✕ ×(下痢)。便秘は便が出にくい状態。水様で形がなくなるのは下痢。
排せつの介護では、羞恥心や自尊心に配慮し、可能なかぎり自立した排せつができるよう支援する。
答えと解説
◯ ○。排せつはとくにプライベートな行為。羞恥心・自立心・自尊心に配慮し、自立を支援する。
排せつ用具は、便意・尿意の有無にかかわらず、自力で移動できるかどうかだけで選ぶ。
答えと解説
✕ ×(両方で選ぶ)。まず便意・尿意の有無で分け、ある場合に移動できるかで用具を選ぶ。
排泄のアセスメントでは、排泄場所がトイレの場合、居室・廊下・トイレの温度や明るさを確認する。
答えと解説
◯ ○(第24回問29)。便意・尿意があり移動できるよう、トイレまでの環境をアセスメントし整える。
便意・尿意はあるが自力で移動が困難な人には、ポータブルトイレが適している。
答えと解説
◯ ○。移動が困難ならポータブルトイレ。安定性・立ち上がりやすさで選び、消臭・消音・プライバシーに配慮する。
おむつは自立を促す用具なので、できるだけ早期から積極的に使用する。
答えと解説
✕ ×(安易な使用を避ける)。おむつは自尊心を傷つけ寝たきりの要因にもなり得るため、おむつ外しに取り組む。
自動排泄処理装置は、原則として要介護4・5の者に限られる。
答えと解説
◯ ○。自動排泄処理装置(福祉用具貸与)は尿便を自動吸引し、原則 要介護4・5の人が対象。
排泄予測支援機器は、膀胱内の状態を感知して尿量を推定し、排尿のタイミングを通知する用具である。
答えと解説
◯ ○。特定福祉用具販売の種目で、2022(令和4)年度から追加された。
五肢複択
排せつのしくみと排せつ障害について、正しいものを2つ選べ。
- 排せつに必要な行為は、知覚・移動・着脱と姿勢・排せつの4つである。
- 便は、腎臓でろ過されて膀胱にためられ、排便反射で排せつされる。
- 尿が漏れることを頻尿という。
- 排せつ障害では、原因を考えるアセスメントが重要である。
- 便秘とは、便が水様となり形がなくなった状態をいう。
答えと解説
正解:1・4
1 正しい。排せつに必要な行為は、知覚・移動・着脱と姿勢・排せつの4つ。
2 誤り。腎臓でろ過されて膀胱にたまるのは尿。便は消化・吸収を経て直腸に達し、排便反射で排せつされる。
3 誤り。尿が漏れるのは尿失禁。頻尿は排尿の回数が多いこと。
4 正しい。排せつ障害は、一連の行為のどこで支障が生じるか、原因を考えるアセスメントが重要。
5 誤り。便が水様で形がなくなるのは下痢。便秘は便が出にくい状態。
排せつ介護と福祉用具について、正しいものを2つ選べ。
- 便意・尿意があり自力で移動できる場合は、トイレ環境のアセスメントを行い必要に応じて整える。
- おむつは寝たきりの要因にもなり得るため、安易な使用を避け、おむつ外しに取り組む。
- 尿意がはっきりしない場合は、まず夜間からトイレ誘導を始める。
- 自動排泄処理装置は、特定福祉用具販売の種目で、要介護1・2の者が対象である。
- 排泄予測支援機器は、すべての要介護者が対象で、2010年度から追加された。
答えと解説
正解:1・2
1 正しい。便意・尿意があり移動できる場合は、トイレまでの環境をアセスメントし、必要に応じて整える。
2 正しい。おむつは自尊心を傷つけ依存心を高め寝たきりの要因にもなり得るため、安易に使わずおむつ外しに取り組む。
3 誤り。尿意がはっきりしない場合は、まず昼間からトイレ誘導を始める。
4 誤り。自動排泄処理装置は福祉用具貸与の種目で、原則として要介護4・5の者が対象。
5 誤り。排泄予測支援機器は2022(令和4)年度から追加された特定福祉用具販売の種目で、対象は限られる。