福祉サービス分野 > 第76講 災害対策基本法とは|避難行動要支援者名簿は義務・個別避難計画は努力義務をわかりやすく/全文
この講で先生が話す内容を、そのまま文章にしたものです。音声を聞けないときや、あとから読み返したいときにどうぞ。上のスライドと同じ内容です。
名簿は義務・個別避難計画は努力義務
第76講 災害対策基本法
第3章 SEC25。防災の基本法。ケアマネ試験では要配慮者・避難行動要支援者まわりが核心です。
- 法の成り立ちと目的を言える
- 要配慮者と避難行動要支援者——定義の階層を区別できる
- 名簿は義務・個別避難計画は努力義務——この対比を即答できる
第76講を始めましょう。今回は、災害対策基本法です。
今日のゴールは3つです。
1つ目、法の成り立ちと、目的を言える。
2つ目、要配慮者と、避難行動要支援者。定義の階層を、区別できる。
3つ目、名簿は義務、個別避難計画は努力義務。この対比を、即答できる。
伊勢湾台風→1961年制定
概要
- 1959(昭和34)年の伊勢湾台風をきっかけに、災害対策全体を体系化し、総合的かつ計画的な防災行政の整備・推進を図るため1961(昭和36)年制定
- 目的=国土、国民の生命、身体・財産を災害から保護し、社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資する(第1条)
災害対策基本法は、1959年、昭和34年の、伊勢湾台風をきっかけとして、災害対策全体を体系化し、総合的かつ計画的な、防災行政の整備および推進を図るために、1961年、昭和36年に、制定されました。
国土、国民の生命、身体・財産を災害から保護し、社会の秩序の維持と、公共の福祉の確保に資することを、目的としています。
きっかけは伊勢湾台風、制定は1961年。この2つは、セットで覚えましょう。
最小化と回復・自主防災・科学と教訓
基本理念①〜③
基本理念は6つ。前半の3つ。
基本理念は、6つあります。前半の3つ。
1つ目、災害の発生を、常に想定するとともに、被害の最小化、及びその迅速な回復を図ること。
2つ目、国、地方公共団体等の、適切な役割分担と連携協力を確保し、住民一人一人が自ら行う防災活動や、自主防災組織など、多様な主体の、自発的な防災活動を促進すること。
3つ目、災害に備える措置を、適切に組み合わせて一体的に講ずること。科学的知見、及び過去の災害から得られた教訓を踏まえて、絶えず改善を図ることです。
生命・身体を最も優先
基本理念④〜⑥
「生命及び身体を最も優先」の一文は、そのまま○×の題材。
後半の3つです。
4つ目、災害発生直後など、情報収集が困難なときでも、できる限り的確に状況を把握し、人材、物資などの資源を適切に配分して、人の生命及び身体を、最も優先して保護すること。
5つ目、被災者の主体的な取組を阻害しないよう配慮しつつ、年齢、性別、障害の有無などの事情を踏まえ、適切に援護すること。
6つ目、災害が発生したときは、速やかに、施設の復旧及び被災者の援護を図り、災害からの、復興を図ることです。
国=万全・都道府県=総合調整
防災の責務
国や地方公共団体等に、以下の責務を定めている。
- 国:組織及び機能の全てを挙げて、防災に関し万全の措置を講ずる
- 都道府県:防災に関する計画を作成・実施し、区域内の市町村等の事務・業務の実施を助け、その総合調整を行う
- 市町村:協力を得て防災に関する計画を作成・実施/指定公共機関等:業務に係る計画を作成・実施し、国・自治体に協力
- 住民等(防災上重要な施設の管理者など):法令・地域防災計画の定めるところにより誠実に責務を果たす
国や、地方公共団体等の責務です。
国は、組織及び機能の全てを挙げて、防災に関し、万全の措置を講ずる。
都道府県は、防災に関する計画を作成・実施し、区域内の市町村等の事務・業務の実施を助け、その、総合調整を行う。
市町村は、関係機関等の協力を得て、防災に関する計画を作成し、実施する。指定公共機関等は、業務に係る計画を作成・実施し、国や自治体に、協力します。
そして、住民等。防災上重要な施設の管理者などは、法令や、地域防災計画の定めるところにより、誠実に、その責務を果たさなければなりません。
大きい輪と小さい輪
★要配慮者と避難行動要支援者
今回いちばんの狙われポイント。2つの言葉の定義の階層。
- 要配慮者=災害時において高齢者・障害者・乳幼児その他の特に配慮を要する者
- 「その他」=妊産婦・傷病者・内部障害者・難病患者等が想定
- 避難行動要支援者=要配慮者のうち、災害時などに自力で避難することが困難で、円滑・迅速な避難のために特に支援を要する者
ここが今回いちばんの狙われポイント。2つの言葉の、定義の階層です。
要配慮者とは、災害時において、高齢者、障害者、乳幼児、その他の、特に配慮を要する者です。
その他としては、妊産婦、傷病者、内部障害者、難病患者等が、想定されています。
そして、要配慮者のうち、災害時などに、自力で避難することが困難で、円滑・迅速な避難のために、特に支援を要する者を、避難行動要支援者といいます。
大きい輪が要配慮者、その中の小さい輪が、避難行動要支援者。この包含関係を、図で覚えましょう。
名簿=義務/計画=努力義務
★名簿と個別避難計画
- 市町村長には、避難行動要支援者の名簿の作成が義務づけられている
- 市町村長は、避難行動要支援者ごとに個別避難計画を作成するよう努めなければならない(努力義務)
市町村長には、避難行動要支援者の、名簿の作成が、義務づけられています。
また、市町村長は、避難行動要支援者ごとに、個別避難計画を、作成するよう努めなければなりません。
名簿は、義務。個別避難計画は、努力義務。この対比が、最重要です。
生活困窮の必須と任意、住まい法の義務とできる。どこまで義務か、は、この分野の、共通テーマです。
福祉専門職の参画が極めて重要
ケアマネと個別避難計画
- 「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」(2021〈令和3〉年5月改定):個別避難計画作成の業務に福祉専門職の参画を得ることが極めて重要
- ①介護支援専門員・相談支援専門員は日頃からケアプラン等の作成を通じて本人の状況を把握しており、信頼関係も期待できる
- ②ケアプラン作成等に合わせて行うことが効果的 ③災害時のケア継続にも役立つ
個別避難計画について、2021年、令和3年5月改定の、避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針では、個別避難計画作成の業務に、福祉専門職の参画を得ることが、極めて重要である、とされています。
理由は3つ。1つ目、介護支援専門員や、相談支援専門員は、日頃から、ケアプラン等の作成を通じて、本人の状況等をよく把握しており、信頼関係も、期待できること。
2つ目、ケアプラン作成等に合わせて行うことが、効果的であること。3つ目、災害時の、ケアの継続にも、役立つことです。
ケアマネ試験で、災害対策基本法が出る理由は、まさにここ。私たち自身が、防災の担い手なんですね。
要配慮者のための避難所
福祉避難所
- 福祉避難所=特に配慮が必要な要配慮者の滞在が想定される避難所。災害対策基本法が規定する避難所の指定基準の1つ
- 2021年改定「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」:社会福祉施設等のほか、機能を整備することを前提に一般の避難所も利用可能な場合に含む
- 一般避難所では災害派遣福祉チームが災害時要配慮者の福祉支援を行う
福祉避難所とは、特に配慮が必要な、要配慮者の滞在が想定される避難所のことで、災害対策基本法が規定する、避難所の指定基準の、1つです。
2021年に改定された、福祉避難所の確保・運営ガイドラインでは、社会福祉施設等のほか、一般の避難所のように、現況では機能を有していない場合であっても、機能を整備することを前提に、利用可能な場合を含む、としています。
なお、一般避難所においては、災害派遣福祉チームが、災害時要配慮者の、福祉支援を行います。
福祉避難所と、災害派遣福祉チーム。この2つの言葉を、持ち帰りましょう。
伊勢湾・階層・義務と努力義務
まとめ
- 伊勢湾台風をきっかけに1961年制定。生命及び身体を最も優先して保護
- 要配慮者=高齢者・障害者・乳幼児など ⊃ 自力避難が困難な人=避難行動要支援者
- 名簿=市町村長の義務/個別避難計画=努力義務。作成にはケアマネ等福祉専門職の参画が極めて重要
まとめです。
災害対策基本法は、伊勢湾台風をきっかけに、1961年制定。生命及び身体を、最も優先して保護。
要配慮者は、高齢者・障害者・乳幼児など。そのうち、自力避難が困難な人が、避難行動要支援者。
名簿の作成は、市町村長の義務。個別避難計画は、努力義務。作成には、ケアマネなど、福祉専門職の参画が、極めて重要。
お疲れさまでした。問題演習で知識を固めましょう。第76講、終了です。
この講の一問一答(◯×12問・五肢複択2問)
すべてオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。答えは「答えと解説」を開くと出ます。全82講ぶんをまとめて解く →
災害対策基本法は、伊勢湾台風をきっかけとして、1961(昭和36)年に制定された。
答えと解説
◯ 正しい。災害対策全体を体系化し、総合的かつ計画的な防災行政の整備・推進を図るために制定された。
災害対策の基本理念には、人の生命及び身体を最も優先して保護することが含まれる。
答えと解説
◯ 正しい。情報収集が困難なときでも状況を把握し、資源を適切に配分して、生命及び身体を最も優先して保護する。
区域内の市町村等が処理する防災に関する事務・業務の実施を助け、その総合調整を行うことは、国の責務とされている。
答えと解説
✕ 誤り。それは都道府県の責務。国は組織及び機能の全てを挙げて防災に関し万全の措置を講ずる。
防災上重要な施設の管理者など住民等は、法令や地域防災計画の定めるところにより、誠実にその責務を果たさなければならない。
答えと解説
◯ 正しい。国・都道府県・市町村・指定公共機関等に加え、住民等の責務も定められている。
要配慮者とは、高齢者、障害者、乳幼児の3者に限られる。
答えと解説
✕ 誤り。「その他の特に配慮を要する者」として、妊産婦・傷病者・内部障害者・難病患者等も想定されている。
避難行動要支援者とは、要配慮者のうち、災害時などに自力で避難することが困難で、円滑・迅速な避難のために特に支援を要する者をいう。
答えと解説
◯ 正しい。要配慮者(大きい輪)の中に避難行動要支援者(小さい輪)が含まれる包含関係。
市町村長には、避難行動要支援者の名簿を作成する義務はない。
答えと解説
✕ 誤り。避難行動要支援者名簿の作成は、市町村長に義務づけられている。
市町村長は、避難行動要支援者ごとに、個別避難計画を作成しなければならない(義務規定である)。
答えと解説
✕ 誤り。個別避難計画は「作成するよう努めなければならない」とされる努力義務。名簿(義務)との対比が最重要。
「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」では、個別避難計画作成の業務に、福祉専門職の参画を得ることが極めて重要であるとされている。
答えと解説
◯ 正しい(2021〈令和3〉年5月改定)。介護支援専門員・相談支援専門員などの参画が想定されている。
介護支援専門員は、日頃からケアプラン等の作成を通じて避難行動要支援者本人の状況等をよく把握しており、信頼関係も期待できるとされている。
答えと解説
◯ 正しい。ほかに、ケアプラン作成等に合わせて行うと効果的であること、災害時のケア継続に役立つことが挙げられている。
指定福祉避難所として利用できる施設は、現況において要配慮者の避難が可能な社会福祉施設等に限られる。
答えと解説
✕ 誤り。2021年改定のガイドラインでは、機能を整備することを前提に、一般の避難所のような施設も利用可能な場合に含むとしている。
一般避難所においては、災害派遣福祉チームが災害時要配慮者の福祉支援を行う。
答えと解説
◯ 正しい。福祉避難所とあわせて「災害派遣福祉チーム」の名称を覚えておく。
五肢複択
避難行動要支援者について正しいものはどれか。2つ選べ。
- 避難行動要支援者とは、要配慮者のうち、自力での避難が困難で、円滑・迅速な避難のために特に支援を要する者をいう。
- 市町村長には、避難行動要支援者名簿の作成が義務づけられている。
- 要配慮者に、妊産婦や難病患者等は含まれない。
- 個別避難計画は、都道府県知事が作成するよう努めることとされている。
- 名簿の作成は努力義務であり、個別避難計画の作成は義務である。
答えと解説
正解:1・2
1 正しい。要配慮者の中の、より支援の必要性が高い層である。
2 正しい。名簿の作成は市町村長の義務。
3 誤り。「その他の特に配慮を要する者」として妊産婦・傷病者・内部障害者・難病患者等が想定される。
4 誤り。個別避難計画の作成に努めるのは市町村長。
5 誤り。逆である。名簿=義務、個別避難計画=努力義務。
災害対策基本法と福祉避難所について正しいものはどれか。2つ選べ。
- 災害対策基本法は、国土、国民の生命、身体・財産を災害から保護することなどを目的としている。
- 福祉避難所とは、特に配慮が必要な要配慮者の滞在が想定される避難所のことである。
- 基本理念では、財産の保護を人の生命よりも優先することとされている。
- 個別避難計画の作成に、介護支援専門員などの福祉専門職が参画することは想定されていない。
- 災害派遣福祉チームは、福祉避難所のみで活動し、一般避難所では活動しない。
答えと解説
正解:1・2
1 正しい。社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的とする(第1条)。
2 正しい。災害対策基本法が規定する避難所の指定基準の1つ。
3 誤り。人の生命及び身体を最も優先して保護することとされている。
4 誤り。取組指針では福祉専門職の参画を得ることが極めて重要とされている。
5 誤り。一般避難所において災害時要配慮者の福祉支援を行う。