福祉サービス分野 > 第82講 日常生活自立支援事業とは|専門員と生活支援員・3つのサービス・成年後見との違いをわかりやすく/全文
この講で先生が話す内容を、そのまま文章にしたものです。音声を聞けないときや、あとから読み返したいときにどうぞ。上のスライドと同じ内容です。
CHAPTER 3 | SEC31 | 重要度A
日常生活自立支援事業とは何か
日常生活自立支援事業は、社会福祉法で第2種社会福祉事業として規定される福祉サービス利用援助事業です。都道府県・指定都市社会福祉協議会が実施主体となり、市町村社会福祉協議会と協力して行います。
- 地域福祉権利擁護事業として創設され、2007(平成19)年に現在の名称に改称された
第82講、日常生活自立支援事業を始めましょう。
日常生活自立支援事業は、社会福祉法で第2種社会福祉事業として規定される、福祉サービス利用援助事業です。都道府県・指定都市社会福祉協議会が実施主体となり、市町村社会福祉協議会と協力して行う事業です。
もともとは地域福祉権利擁護事業として創設され、2007年、平成19年に現在の名称に改称されました。
過去問です。第16回、問60。各都道府県・指定都市社会福祉協議会が実施主体となり、第2種社会福祉事業として実施されている事業である。答えはマル。記述のとおりです。
契約で利用・6割が認知症高齢者
目的:意思と自己決定を尊重した援助
- 判断能力が不十分となった人が福祉サービスを利用するとき、その人の意思と自己決定を尊重し、できる限りその人らしい生活ができるよう援助することが目的
- 利用者本人との契約でサービスが提供される。相談や支援計画の作成は無料だが、契約締結後のサービスは有料
- 利用件数は年々増加しており、6割が認知症高齢者の利用
事業の目的です。判断能力が不十分となった人が福祉サービスを利用するとき、その人の意思と自己決定を尊重し、できる限りその人らしい生活ができるよう援助することを目的とします。
利用者本人との契約でサービスが提供されます。相談や支援計画の作成は無料ですが、契約締結後のサービスは有料です。
利用件数は年々増加しており、6割が認知症高齢者の利用となっています。
不十分ながらも判断能力がある
対象:2つの要件を満たす人
- ❶判断能力が不十分となり、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を適切に行うことが困難であること
- ❷日常生活自立支援事業の利用契約を締結する能力があること
対象となるのは、2つの要件を満たす人です。1つめ、判断能力が不十分となり、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を適切に行うことが困難であること。
2つめ、日常生活自立支援事業の利用契約を締結する能力があることです。
つまり、契約締結ができるだけの能力、すなわち、不十分ながらも判断能力がある人が対象です。利用にあたって、認知症の確定診断や障害者手帳の有無などは、条件とはなりません。
手続きの援助が中心
サービス①:福祉サービスの利用援助
- 福祉サービスの利用開始・利用終了の手続き
- 福祉サービスの苦情解決制度の利用手続き
- 利用料支払いの手続き、住宅改修や消費契約、住民票の届出などの行政手続きの援助など
サービスの内容は、基本の3つです。1つめ、福祉サービスの利用援助。福祉サービスの利用開始・利用終了の手続きを援助します。
福祉サービスの苦情解決制度の利用手続きも含まれます。
さらに、利用料支払いの手続き、住宅改修や消費契約、住民票の届出などの行政手続きの援助などを行います。
過去問です。第17回、問59。具体的な支援内容には、苦情解決制度の利用援助や日常的金銭管理が含まれる。答えはマル。そのほか、福祉サービスの利用開始・終了の手続きや、預貯金通帳の預かりなども行います。
宝石・貴金属は預からない
サービス②日常的金銭管理・③書類等の預かり
- 日常的金銭管理:年金や福祉手当の受領に必要な手続き、医療費・税金・社会保険料・公共料金を支払う手続き、これらの支払いに必要な預貯金の出し入れ・解約手続きなど
- 書類等の預かり:年金証書、預貯金通帳、権利証、保険証書、実印・銀行印などの預かり(宝石・貴金属等は預からない)
- これらの援助に伴う定期的な訪問による生活変化の察知を行う
2つめ、日常的金銭管理。年金や福祉手当の受領に必要な手続き、医療費、税金、社会保険料、公共料金を支払う手続き、これらの支払いに必要な預貯金の出し入れや解約手続きなどです。
3つめ、書類等の預かり。年金証書、預貯金通帳、権利証、保険証書、実印・銀行印などを預かります。ただし、宝石・貴金属等は預かりません。
さらに、これらの援助に伴う定期的な訪問による、生活変化の察知を行います。
実施主体と委託の関係
実施体制:委託先は基幹的社協
- 実施主体は都道府県・指定都市社会福祉協議会で、事業の一部を市町村社会福祉協議会に委託する
- 事業を委託された市町村社会福祉協議会を基幹的社会福祉協議会という
- 基幹的社会福祉協議会には、専門員と生活支援員が配置される
実施体制です。実施主体は都道府県・指定都市社会福祉協議会で、事業の一部を市町村社会福祉協議会に委託します。
事業を委託された市町村社会福祉協議会を、基幹的社会福祉協議会といいます。
基幹的社会福祉協議会には、専門員と生活支援員が配置されます。この2つの職種の役割分担が、次のポイントです。
計画・契約は専門員
専門員と生活支援員:役割の分担
- 専門員:高齢者や障害者への援助経験がある社会福祉士、精神保健福祉士などで一定の研修を受けた者。初期相談、支援計画の作成、契約の締結、生活支援員の指導などを行う
- 生活支援員:研修修了者で実施主体と雇用契約をした者。支援計画に基づく具体的なサービスを提供する
専門員は、高齢者や障害者への援助経験がある社会福祉士、精神保健福祉士などで、一定の研修を受けた者です。初期相談、支援計画の作成、契約の締結、生活支援員の指導などを行います。
生活支援員は、研修修了者で実施主体と雇用契約をした者です。支援計画に基づく具体的なサービスを提供します。
過去問です。第17回、問59。初期相談から支援計画の策定、利用契約の締結までを担うのは、生活支援員である。答えはバツ。この業務を担うのは専門員です。生活支援員は、支援計画に基づく具体的なサービスを提供します。
審査する会・監督する会
契約締結審査会と運営適正化委員会
- 実施主体となる都道府県・指定都市社協には、医療・福祉・法律の専門家による契約締結審査会が置かれ、専門員が判断できない場合の本人の契約締結能力の程度を審査する
- 第三者機関として、運営適正化委員会が事業の適正な運営を監督する(利用者からの苦情の申立て先にもなる)
実施主体となる都道府県・指定都市社会福祉協議会には、医療・福祉・法律の専門家による契約締結審査会が置かれ、専門員が判断できない場合の、本人の契約締結能力の程度を審査します。
また、第三者機関として、運営適正化委員会が事業の適正な運営を監督します。利用者からの苦情の申立て先にもなります。
契約できるかを審査するのが契約締結審査会、運営を監督するのが運営適正化委員会。名前のとおりに役割を対応させて覚えましょう。
手続きの援助5つ
介護保険を利用する際の具体的な援助
介護保険の利用にあたって、日常生活自立支援事業による具体的な援助を見ていきます。1つめ、要介護認定等に関する申請手続きの援助。
2つめ、要介護認定等の調査に立ち会い、本人の状況を正しく調査員に伝えること。
3つめ、居宅介護支援事業者の選択の援助と、事業者との契約締結の手続きの援助。
4つめ、サービス提供事業者との契約締結の手続きの援助。
5つめ、利用料の支払いの援助です。どれも、手続きの援助である点に注目してください。
締結の「援助」はする・「代理」はしない
成年後見制度との違い:契約締結能力がカギ
- どちらにも利用制限はないが、日常生活自立支援事業は本人に契約締結能力があることを利用の要件としており、成年後見制度の後見類型や保佐類型には該当しないと考えられる
- 逆に、日常生活自立支援事業の契約締結ができないと判断された場合には、成年後見制度の利用を検討する必要がある
成年後見制度との違いです。どちらにも利用制限はありませんが、日常生活自立支援事業は、本人に契約締結能力があることを利用の要件としており、成年後見制度の後見類型や保佐類型には該当しないと考えられます。
逆にいえば、日常生活自立支援事業の契約締結ができないと判断された場合には、成年後見制度の利用を検討する必要があります。
過去問です。第10回、問59、改題。支援内容には、介護保険サービスの利用者の代理者として、事業者と契約締結を行うことが含まれる。答えはバツ。契約締結のための手続きの援助を行うことは含まれますが、契約を締結することは含まれません。
第82講のゴール
まとめ:契約できる人を、契約で支える
- 第2種社会福祉事業(福祉サービス利用援助事業)。実施主体=都道府県・指定都市社協→一部を市町村社協へ委託(基幹的社協)。対象=判断能力が不十分だが契約締結能力がある人
- サービス=利用援助・日常的金銭管理・書類等の預かり(宝石・貴金属は×)+定期訪問。専門員=相談・計画・契約締結/生活支援員=具体的サービス
- 契約締結審査会が能力を審査・運営適正化委員会が運営を監督。契約の代理はしない。締結できなければ成年後見制度を検討
まとめです。日常生活自立支援事業は、社会福祉法の第2種社会福祉事業、福祉サービス利用援助事業です。実施主体は都道府県・指定都市社会福祉協議会で、一部を市町村社協へ委託し、委託先を基幹的社協といいます。対象は、判断能力が不十分だが、契約締結能力がある人です。
サービスは、福祉サービスの利用援助、日常的金銭管理、書類等の預かりの3つに、定期訪問による生活変化の察知。宝石・貴金属は預かりません。専門員が相談、計画、契約締結を担い、生活支援員が具体的なサービスを提供します。
契約締結審査会が本人の契約能力を審査し、運営適正化委員会が運営を監督します。契約の代理はしません。契約締結ができない場合は、成年後見制度の利用を検討します。
第82講はここまでです。専門員と生活支援員の役割の違いを、一問一答で確かめておきましょう。おつかれさまでした。
この講の一問一答(◯×12問・五肢複択2問)
すべてオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。答えは「答えと解説」を開くと出ます。全82講ぶんをまとめて解く →
日常生活自立支援事業は、社会福祉法で第2種社会福祉事業として規定される福祉サービス利用援助事業である。
答えと解説
◯ ○(第16回-問60)。各都道府県・指定都市社会福祉協議会が実施主体となり、第2種社会福祉事業として実施されています。
日常生活自立支援事業の実施主体は、市町村社会福祉協議会である。
答えと解説
✕ ×。実施主体は都道府県・指定都市社会福祉協議会で、事業の一部を市町村社会福祉協議会に委託します。委託された市町村社協を基幹的社会福祉協議会といいます。
日常生活自立支援事業では、相談や支援計画の作成は無料だが、契約締結後のサービスは有料である。
答えと解説
◯ ○。利用者本人との契約でサービスが提供されます。利用件数は年々増加しており、6割が認知症高齢者の利用です。
日常生活自立支援事業の利用には、認知症の確定診断や障害者手帳が必要である。
答えと解説
✕ ×。認知症の確定診断や障害者手帳の有無などは条件とはなりません。契約締結ができるだけの能力、すなわち不十分ながらも判断能力がある人が対象です。
日常生活自立支援事業の対象となるには、事業の利用契約を締結する能力があることが必要である。
答えと解説
◯ ○。①判断能力が不十分で情報の入手・理解・判断・意思表示が困難であること、②利用契約を締結する能力があること、の2要件を満たす人が対象です。
日常生活自立支援事業の具体的な支援内容には、苦情解決制度の利用援助や日常的金銭管理が含まれる。
答えと解説
◯ ○(第17回-問59)。そのほか、福祉サービスの利用開始・終了の手続きや、預貯金通帳の預かりなども行います。
書類等の預かりサービスでは、宝石や貴金属も預かる。
答えと解説
✕ ×。預かるのは年金証書、預貯金通帳、権利証、保険証書、実印・銀行印などで、宝石・貴金属等は預かりません。
初期相談から支援計画の策定、利用契約の締結までを担うのは、生活支援員である。
答えと解説
✕ ×(第17回-問59)。この業務を担うのは専門員です。生活支援員は、支援計画に基づく具体的なサービスを提供します。
生活支援員は、支援計画に基づく具体的なサービスを提供する。
答えと解説
◯ ○。生活支援員は研修修了者で実施主体と雇用契約をした者です。専門員は初期相談、支援計画の作成、契約の締結、生活支援員の指導などを行います。
契約締結審査会は、専門員が判断できない場合の本人の契約締結能力の程度を審査する。
答えと解説
◯ ○。実施主体の都道府県・指定都市社協に置かれ、医療・福祉・法律の専門家で構成されます。第三者機関として運営適正化委員会が事業の適正な運営を監督します。
日常生活自立支援事業の支援内容には、利用者の代理者として事業者と契約締結を行うことが含まれる。
答えと解説
✕ ×(第10回-問59・改)。契約締結のための手続きの援助を行うことは含まれますが、契約を締結することは含まれません。
日常生活自立支援事業の契約締結ができないと判断された場合には、成年後見制度の利用を検討する必要がある。
答えと解説
◯ ○。本事業は本人に契約締結能力があることを利用の要件としており、成年後見制度の後見類型や保佐類型には該当しないと考えられます。
五肢複択
日常生活自立支援事業の概要とサービスについて正しいものはどれか。2つ選べ。
- 日常生活自立支援事業は、社会福祉法で第2種社会福祉事業として規定される福祉サービス利用援助事業である。
- 実施主体は市町村社会福祉協議会であり、事業の一部を都道府県社会福祉協議会に委託する。
- 支援内容には、日常的金銭管理や、年金証書・預貯金通帳・実印などの書類等の預かりが含まれる。
- 相談や支援計画の作成を含め、サービスはすべて無料である。
- 利用にあたっては、認知症の確定診断や障害者手帳の所持が条件となる。
答えと解説
正解:1・3
1 正しい(第16回-問60)。地域福祉権利擁護事業として創設され、2007(平成19)年に現在の名称に改称された。
2 誤り。実施主体は都道府県・指定都市社会福祉協議会で、事業の一部を市町村社会福祉協議会に委託する(基幹的社会福祉協議会)。
3 正しい。ただし宝石・貴金属等は預からない。定期的な訪問による生活変化の察知も行う。
4 誤り。相談や支援計画の作成は無料だが、契約締結後のサービスは有料である。
5 誤り。確定診断や手帳の有無は条件とならない。契約締結能力がある人が対象である。
日常生活自立支援事業の実施体制と成年後見制度との関係について正しいものはどれか。2つ選べ。
- 初期相談から支援計画の策定、利用契約の締結までを担うのは、生活支援員である。
- 生活支援員は、研修修了者で実施主体と雇用契約をした者であり、支援計画に基づく具体的なサービスを提供する。
- 事業の適正な運営を監督する第三者機関は、契約締結審査会である。
- 日常生活自立支援事業は本人に契約締結能力があることを利用の要件としており、成年後見制度の後見類型や保佐類型には該当しないと考えられる。
- 利用者の代理者として事業者と契約を締結することも、支援内容に含まれる。
答えと解説
正解:2・4
1 誤り(第17回-問59)。これらの業務を担うのは専門員である。
2 正しい。専門員は社会福祉士・精神保健福祉士などで一定の研修を受けた者が担う。
3 誤り。運営を監督する第三者機関は運営適正化委員会。契約締結審査会は本人の契約締結能力の程度を審査する。
4 正しい。契約締結ができないと判断された場合には、成年後見制度の利用を検討する必要がある。
5 誤り(第10回-問59・改)。契約締結のための手続きの援助は含まれるが、契約を締結することは含まれない。