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高齢者虐待防止法とは|5つの虐待・身体拘束の3要件・通報義務をわかりやすく

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福祉サービス分野 > 第80講 高齢者虐待防止法とは|5つの虐待・身体拘束の3要件・通報義務をわかりやすく/全文

この講で先生が話す内容を、そのまま文章にしたものです。音声を聞けないときや、あとから読み返したいときにどうぞ。上のスライドと同じ内容です。

CHAPTER 3 | SEC29 | 重要度A

高齢者虐待防止法とは何か

高齢者虐待防止法(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)は、高齢者(65歳以上の者)への虐待の防止とあわせて、養護者支援を目的とします。

第80講、高齢者虐待の防止を始めましょう。重要度Aの単元です。

高齢者虐待防止法、正式には、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律は、65歳以上の高齢者への虐待の防止とあわせて、養護者支援を目的とします。

責任主体は市町村と位置づけられています。

そして、地域包括支援センターを高齢者虐待防止の中核機関として、相談支援、権利擁護などを業務の範囲としています。虐待防止と養護者支援、この2本立てが法の骨格です。

定義・対応・支援・公表

法のおもな内容

法のおもな内容です。1つめ、虐待の定義と、虐待発見時の対応。

2つめ、市町村による養護者支援施策。介護の負担軽減のため、養護者の相談、指導および助言、その他の必要な措置です。虐待した人を罰するだけでなく、支える視点があるのがこの法律の特徴です。

3つめ、施設の虐待状況の、都道府県知事による公表。

4つめ、高齢者の福祉に関係する者に対して、虐待を発見しやすい立場を自覚して、早期発見に努めることを求めています。

誰による虐待か

虐待の主体:養護者と養介護施設従事者等

高齢者虐待防止法では、高齢者虐待を「養護者による高齢者虐待及び養介護施設従事者等による高齢者虐待」と定義しています。

養介護施設には老人福祉施設・有料老人ホーム・介護保険施設・地域密着型介護老人福祉施設・地域包括支援センターが、養介護事業には居宅サービス事業や居宅介護支援事業などが含まれます。

高齢者虐待の定義です。高齢者虐待防止法では、高齢者虐待を、養護者による高齢者虐待、および、養介護施設従事者等による高齢者虐待、と定義しています。

養護者とは、高齢者を現に養護する者であって、養介護施設従事者等以外のもの。同居の家族などがイメージです。

養介護施設従事者等とは、老人福祉法と介護保険法に規定する、養介護施設または養介護事業の業務に従事する職員です。

養介護施設には、老人福祉施設、有料老人ホーム、介護保険施設、地域密着型介護老人福祉施設、そして地域包括支援センターが含まれます。養介護事業には、居宅サービス事業や居宅介護支援事業なども含まれます。

5類型 その1

虐待の内容①:身体的・介護等放棄・心理的

過去問(第28回-問60):「養護者の高齢者に対する著しい暴言は、身体的虐待に該当する」=×。暴言は心理的虐待です。

虐待の内容、5類型を見ていきます。まず身体的虐待。高齢者の身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を加えることです。

介護等放棄、ネグレクト。高齢者を衰弱させるような著しい減食、または長時間の放置、養護者以外の同居人による虐待の放置など、養護を著しく怠ることです。

心理的虐待。高齢者に対する著しい暴言、または著しく拒絶的な対応、その他、高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うことです。

過去問です。第28回、問60。養護者の高齢者に対する著しい暴言は、身体的虐待に該当する。答えはバツ。暴言は心理的虐待に該当します。

5類型 その2

虐待の内容②:性的・経済的

経済的虐待の主体には高齢者の親族も含まれます(同居していない親族が年金を勝手に使うケースなど)。

性的虐待。高齢者にわいせつな行為をすること、または、高齢者をしてわいせつな行為をさせることです。

経済的虐待。養護者、または高齢者の親族が、当該高齢者の財産を不当に処分すること、その他、当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること、日常生活に必要な金銭を渡さない、使わせないことです。

経済的虐待の主体には、高齢者の親族も含まれます。同居していない親族が年金を勝手に使ってしまうようなケースです。ここは出題ポイントです。

「ゼロへの手引き」の11行為

身体拘束は原則禁止

高齢者虐待防止法の定義とは別に虐待に含まれるものに、身体拘束があります。介護保険制度において、身体拘束は原則として禁止されています。

次に身体拘束です。高齢者虐待防止法の定義とは別に、虐待に含まれるものに身体拘束があります。介護保険制度において、身体拘束は原則として禁止されています。

厚生労働省の、身体拘束ゼロへの手引き、2001年、平成13年に、禁止対象となる具体的な行為が11、示されています。

例えば、徘徊や転落を防ぐためにひもなどで縛る。自分で降りられないようにベッドを柵、サイドレールで囲む。ミトン型の手袋をつける。Y字型抑制帯や車いすテーブルをつける。立ち上がりを妨げるいすを使う。介護衣、つなぎ服を着せる。向精神薬を過剰に服用させる。開けることのできない居室などに隔離する、などです。

サイドレールで囲むことや、ミトン、つなぎ服、薬の過剰服用まで身体拘束にあたる。範囲の広さをおさえましょう。

「すべて」を満たす

例外の3要件:切迫性・非代替性・一時性

利用者本人または他の利用者などの、生命または身体を保護するため「緊急やむを得ない場合」には、次の3要件をすべて満たすことで、身体拘束が認められます。

過去問(第20回-問60):「3要件のいずれかを満たす場合」=×すべてを満たす場合です。

例外です。利用者本人、または他の利用者などの、生命または身体を保護するため、緊急やむを得ない場合には、3つの要件をすべて満たすことで、身体拘束が認められます。

1つめ、切迫性。生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと。

2つめ、非代替性。身体拘束その他の行動制限を行う以外に、代替する介護方法がないこと。

3つめ、一時性。身体拘束その他の行動制限が、一時的なものであることです。

過去問です。第20回、問60。身体拘束が認められるのは、切迫性、非代替性、一時性のいずれかを満たす場合である。答えはバツ。すべてを満たす場合です。

委員会・指針・研修

記録がないと減算・2018年度改定の3措置

介護保険施設等において身体拘束を行う場合、その態様および時間、その際の入所者の心身の状況、ならびに緊急やむを得ない理由の記録を行っていない場合、身体拘束廃止未実施減算が算定されます。

さらに、2018年度、平成30年度の介護報酬改定で、次の措置が追加されました。身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を、3月に1回以上開催するとともに、その結果について、介護職員その他従業者に周知徹底を図ること。

身体的拘束等の適正化のための指針を整備すること。そして、介護職員その他の従業者に対し、適正化のための研修を定期的に実施すること。委員会、指針、研修の3点セットです。

発見時の対応 その1

家庭での虐待:通報→市町村→立入調査→措置

通報(生命・身体に重大な危険通報義務。本人が市町村へ届け出ることも可能)
市町村が事実確認・安全確認。市町村長は重大な危険が生じている場合、立入調査ができる
立入調査にあたって所轄の警察署長援助を求めることができる。居室を確保するための必要な措置をとる
老人福祉法による保護のための措置一時保護など)

発見時の対応です。まず家庭における虐待。虐待を発見した人は市町村へ通報します。高齢者の生命または身体に重大な危険が生じている場合は、通報義務です。また、通報に代えて、本人が市町村へ届け出ることも可能です。

通報を受けた市町村は、事実確認、安全確認を行います。市町村長は、高齢者の生命または身体に重大な危険が生じている場合は、立入調査ができます。

立入調査にあたっては、所轄の警察署長に援助を求めることができます。また、居室を確保するための必要な措置をとります。

そして、老人福祉法による保護のための措置、一時保護などにつなげます。前の講で学んだ、市町村の措置がここで生きてきます。

発見時の対応 その2

施設での虐待:通報→報告→監督権限・知事が公表

養介護施設・病院・保健所などの団体、養介護施設従事者等・医師・保健師・弁護士など高齢者の福祉に職務上関係のある者は早期発見に努めなければならず、介護支援専門員にもその役割が期待されています。

施設などでの虐待への対応です。施設内で虐待を受けた高齢者を発見した場合、施設等職員には通報義務があります。ここは、生命または身体に重大な危険が生じている場合に限りません。家庭のケースとの違いに注意です。

通報を受けた市町村は、都道府県に報告します。通報や報告を受けた市町村長、または都道府県知事は、老人福祉法または介護保険法による監督権限を行使します。

なお、都道府県知事は、毎年度、養介護施設従事者等による高齢者虐待の状況等について、公表するものとされています。

また、養介護施設、病院、保健所などの団体や、養介護施設従事者等、医師、保健師、弁護士など、高齢者の福祉に職務上関係のある者は、虐待の早期発見に努めなければなりません。介護支援専門員にも、その役割が期待されています。

令和5年度調査

高齢者虐待の現状:いずれも増加

高齢者虐待の現状です。厚生労働省の令和5年度調査によると、2023年度の相談・通報件数と虐待判断件数は、養護者によるもの、養介護施設従事者等によるもの、いずれも前年度より増加しています。

件数です。養護者による虐待は、相談・通報が4万386件、虐待判断が1万7100件。養介護施設従事者等によるものは、相談・通報が3441件、虐待判断が1123件です。

種別では、どちらも1位が身体的虐待。養護者で65.1パーセント、施設従事者等で51.3パーセント。2位はどちらも心理的虐待です。養護者側は、3位介護等放棄、4位経済的虐待、5位性的虐待の順となっています。

第80講のゴール

まとめ:責任主体は市町村・中核は地域包括

まとめです。高齢者虐待防止法の高齢者は65歳以上。責任主体は市町村、中核機関は地域包括支援センターです。虐待は5類型で、著しい暴言は心理的虐待。経済的虐待は高齢者の親族も主体に含まれます。

身体拘束は原則禁止。例外は、切迫性、非代替性、一時性のすべてを満たし、記録を行った場合です。委員会を3月に1回以上、指針の整備、定期的な研修の3点セットも覚えましょう。

家庭での虐待は、重大な危険が生じている場合に通報義務。市町村長は立入調査ができ、警察署長に援助を求められます。施設では、職員の通報義務は重大な危険に限らず、都道府県知事が毎年度公表します。

第80講はここまでです。重要度Aの単元なので、過去問の論点を一問一答でしっかり固めましょう。おつかれさまでした。

この講の一問一答(◯×12問・五肢複択2問)

すべてオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。答えは「答えと解説」を開くと出ます。全82講ぶんをまとめて解く →

  1. 高齢者虐待防止法における高齢者とは、65歳以上の者をいう。

    答えと解説

     ○。高齢者虐待防止法は、65歳以上の高齢者への虐待の防止とあわせて、養護者支援を目的としています。

  2. 高齢者虐待防止の責任主体は、都道府県である。

    答えと解説

     ×。責任主体は市町村です。地域包括支援センターが高齢者虐待防止の中核機関として位置づけられています。

  3. 高齢者虐待防止法では、地域包括支援センターが高齢者虐待防止の中核機関として位置づけられている。

    答えと解説

     ○。相談支援、権利擁護などを業務の範囲としています。

  4. 高齢者虐待防止法における高齢者虐待とは、養護者による高齢者虐待および養介護施設従事者等による高齢者虐待をいう。

    答えと解説

     ○。養護者とは高齢者を現に養護する者であって養介護施設従事者等以外のもの、養介護施設従事者等とは老人福祉法と介護保険法に規定する養介護施設または養介護事業の業務に従事する職員です。

  5. 養護者の高齢者に対する著しい暴言は、身体的虐待に該当する。

    答えと解説

     ×(第28回-問60)。著しい暴言または著しく拒絶的な対応その他著しい心理的外傷を与える言動は、心理的虐待に該当します。

  6. 日常生活に必要な金銭を渡さない・使わせないことは、経済的虐待に該当する。

    答えと解説

     ○。経済的虐待には、財産の不当な処分、不当に財産上の利益を得ることも含まれ、主体には養護者のほか高齢者の親族も含まれます。

  7. 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲むことは、身体拘束にはあたらない。

    答えと解説

     ×。「身体拘束ゼロへの手引き」(2001〈平成13〉年)で身体拘束禁止の対象行為とされています。ミトン型の手袋、介護衣(つなぎ服)、向精神薬の過剰服用なども対象です。

  8. 「緊急やむを得ない場合」として身体拘束が認められるのは、切迫性、非代替性、一時性のいずれかを満たす場合である。

    答えと解説

     ×(第20回-問60)。切迫性・非代替性・一時性のすべてを満たす場合です。あわせて態様・時間・心身の状況・緊急やむを得ない理由の記録が必要です。

  9. 家庭における虐待で、高齢者の生命または身体に重大な危険が生じている場合、発見した者には市町村への通報義務がある。

    答えと解説

     ○。通報に代えて、本人が市町村へ届け出ることも可能です。

  10. 市町村長は、高齢者の生命または身体に重大な危険が生じている場合、立入調査ができ、所轄の警察署長に援助を求めることができる。

    答えと解説

     ○。事実確認・安全確認として、立入調査と警察署長への援助要請、居室を確保するための必要な措置が定められています。

  11. 施設内で虐待を受けた高齢者を発見した施設等職員の通報義務は、生命または身体に重大な危険が生じている場合に限られる。

    答えと解説

     ×。施設等職員の通報義務は、生命または身体に重大な危険が生じている場合に限りません。家庭のケース(重大な危険が生じている場合に通報義務)との違いに注意です。

  12. 2023(令和5)年度の調査では、養護者による高齢者虐待の種別で最も多いのは身体的虐待である。

    答えと解説

     ○。養護者による虐待では身体的虐待65.1%、次いで心理的虐待38.3%。養介護施設従事者等でも身体的虐待51.3%が最多です。相談・通報件数、虐待判断件数はいずれも前年度より増加しています。

五肢複択

  1. 高齢者虐待防止法における高齢者虐待について正しいものはどれか。2つ選べ。

    • 高齢者虐待防止法における高齢者とは65歳以上の者をいい、高齢者虐待防止の責任主体は市町村である。
    • 養護者の高齢者に対する著しい暴言は、身体的虐待に該当する。
    • 高齢者を衰弱させるような著しい減食または長時間の放置は、介護等放棄(ネグレクト)に該当する。
    • 経済的虐待を行う主体は養護者に限られ、高齢者の親族は含まれない。
    • 高齢者虐待防止の中核機関として位置づけられているのは、保健所である。
    答えと解説

    正解:1・3

    1 正しい。地域包括支援センターが中核機関として相談支援・権利擁護などを担う。

    2 誤り(第28回-問60)。著しい暴言は心理的虐待に該当する。

    3 正しい。養護者以外の同居人による虐待の放置等、養護を著しく怠ることも含まれる。

    4 誤り。経済的虐待の主体は「養護者または高齢者の親族」であり、親族も含まれる。

    5 誤り。中核機関は地域包括支援センターである。

  2. 身体拘束および高齢者虐待発見時の対応について正しいものはどれか。2つ選べ。

    • 「緊急やむを得ない場合」として身体拘束が認められるのは、切迫性、非代替性、一時性のいずれかを満たす場合である。
    • 身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会は、3月に1回以上開催しなければならない。
    • 市町村長は、立入調査にあたって、所轄の警察署長に援助を求めることはできない。
    • 施設内で虐待を受けた高齢者を発見した施設等職員の通報義務は、生命または身体に重大な危険が生じている場合に限らない。
    • 養介護施設従事者等による高齢者虐待の状況等は、市町村長が毎年度公表する。
    答えと解説

    正解:2・4

    1 誤り(第20回-問60)。3要件のすべてを満たす場合である。

    2 正しい。2018(平成30)年度介護報酬改定で、委員会の開催・指針の整備・定期的な研修が追加された。

    3 誤り。立入調査にあたって、所轄の警察署長に援助を求めることができる。

    4 正しい。家庭における通報義務(重大な危険が生じている場合)との違いがポイントである。

    5 誤り。毎年度公表するのは都道府県知事である。

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